金属行人(7月19日付)

 インドネシア政府と米産銅大手フリーポート・マクモラン(FCX)との間で、4年以上にわたって繰り広げられてきた銅鉱山権益をめぐる駆け引きが一応の決着を見た。インドネシア国営企業がグラスベルグ銅鉱山を運営するFCX子会社PTFIの株式51%を38億5千万ドルで取得することで双方が合意した▼同国は2009年に公布された新鉱業法に基づき、鉱石の高付加価値化義務を推進する政策を進めてきた。この過程でPTFIには銅精鉱を輸出継続するために旧鉱業事業契約から新たな鉱業事業許可への切り替えや銅製錬所の建設、同国企業への株式51%の売却などが求められていた▼両者は昨年8月にこれらの条件で大筋合意したが、株式譲渡額などで交渉が難航していた。その譲渡額で折り合いがついたことで今後の焦点は「銅製錬所の建設」に移りそうだ▼新鉱業法施行から10年近くたつが、同国での銅製錬所建設は一向に進展していない。最も大きい理由は採算性の問題だ。銅価格は一時期に比べ回復したとはいえ、安定的に高水準を維持する見通しが立たない中での製錬所新設はリスクを伴う。さらに今回は5年以内という期限も設定されている。こうした問題にどういった形で対処していくのだろうか。

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