北の非核化、いつでもいいと言い始めたトランプ氏

By 太田清

ホワイトハウスで、議員らにロシアのプーチン大統領との記者会見に関する書面を読み上げるトランプ米大統領=17日(ロイター=共同)

 歴史的な米朝首脳会談から1月以上がたち、焦点である北朝鮮の非核化の進展が気になるところだが、トランプ米大統領はホワイトハウスでの議員らとの会合で、「(北朝鮮との)交渉はとっても、とっても順調に進んでいる。関係は良好だ」としながら、非核化交渉に「時間的リミットはないし、(交渉を)加速させようと焦ってはいない」と、交渉に期限を設けていない考えを明らかにした。米主要メディアが19日までに伝えた。 

 6月12日の首脳会談直後には「非核化プロセスは非常に迅速に始まる」とすぐにも着手するかのように言明していたが、具体的な行程を巡る米朝交渉が難航しているのは疑いようもなく、「進展に対する疑念がますます強まっている」(英紙ガーディアン)との指摘も出ている。 

 これに先立ち、トランプ大統領の1期目任期が終わる2021年1月までの非核化を目標に掲げていたポンペオ国務長官も、北朝鮮との交渉では非核化措置の「期限は設けない」と述べていた。ポンペオ氏は今月6~7日、北朝鮮を訪れ、非核化実現に向け北朝鮮側と協議したが、大きな進展はなく、過去2回の訪朝時と異なり、金正恩朝鮮労働党委員長とは会談できなかった。正恩氏は中国国境近くの地方視察を優先したとみられる。 

 トランプ氏の発言について、菅義偉官房長官は18日の記者会見で「朝鮮半島の完全非核化を含め、米朝首脳間の合意が完全、迅速に履行されることを期待する」と述べるにとどまった。

 「迅速」と言っておきながら、「期限はない」と前言を翻した感のあるトランプ氏だが、前言撤回は同氏の恒例行事となっている。先の米ロ首脳会談でも会談後の会見で、米大統領選介入を否定したロシアのプーチン大統領に同調したとして激しい非難を浴び、その後、発言を修正。ロシアの介入の事実について「それ(ロシア)だという理由が見当たらない」と言ったことは間違いで、「それじゃないという理由が見当たらない」と言うつもりだったと詭弁を弄し、メディアを憤慨させている。 (共同通信=太田清)

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