【独占インタビュー】ガスリーの美学「直線で抜いてもつまらない。コーナーでバトルするから、みんながエキサイトする」

 フランスがサッカーワールドカップで20年ぶりに優勝して、無類のサッカーファンでもあるピエール・ガスリーはさぞ大喜びだったはず。ところがホッケンハイムでインタビューに応じた彼は、「それはもちろんすごくうれしかったけど、でもペナルティのことが今でもすごく頭に来てるんだ」と、イギリスで10位入賞を失う原因となった5秒加算ペナルティが許せないようだった。

──まずはワールドカップサッカー、フランスの優勝、おめでとうございます。
ガスリー:ありがとう。決勝日は幸いレースがなかったから、自宅で親しい友人たちと一緒に観戦したんだ。優勝が決まったあと、みんなで町に繰り出してね。僕の生まれたルーアンは地方の小都市だけど、あんなにもたくさんの人で膨れ上がったのは初めて見たよ。人口が軽く2倍になってたんじゃないかな。

2018年F1第11戦ドイツGP木曜 インタビューにこたえるピエール・ガスリー(トロロッソ・ホンダ)

──その一方で、あなた自身はイギリスの入賞が取り消されてしまいました。
ガスリー:そう。イギリスGPが終わってからも、10日間は腹立ちを抑えられなかったよ。FIAの決定は本当に不条理だし、何より一貫性がないよね。

──トップドライバーには裁定が甘くて、ルーキーや実績のないドライバーに厳しい傾向があるのでは?
ガスリー:それはないと思う。トップドライバーにしても、前回はセーフだったのに、ほとんど同じような状況でペナルティを取られるということがよくあるし。とにかく週末ごとにペナルティの基準がころころ変わるように見える。それが一番の問題だと思う。

──決して自分は、間違ったことはしてない?
ガスリー:もちろんだよ。昔に比べて今のF1はオーバーテイクがすごく難しい。空力がすごく洗練されてるし、タイヤもすぐに劣化するし、マシン差も大きいしね。そんな中で僕たちドライバーはほんのわずかなチャンスも見逃さずに、思い切って攻めようとしてるんだ。そうじゃなければ他のクルマを抜くことなんて、永久に不可能になってしまうからね。

──あえてコーナーで抜かなくても。
ガスリー:あれが唯一のチャンスだったから。ストレートでDRSを使って抜いても、観てる方も面白くも何ともないでしょ。コーナーでバトルするから、みんながエキサイトする。その興奮は、当事者の僕らも同じなんだ。多少は無理するから、時には接触することもあるさ。でもそれは戦ってる者同士、了解してるはず。カート時代から僕はずっとそうやって来たし、他のドライバーもそうだと思う。MotoGPをたくさんの人が観に行くのは、オーバーテイクが大きな魅力のひとつだからだよね。四輪のF1に同じことは求められないけど、現状はちょっとひどすぎる。

──もし今回、シルバーストンと同じ状況になったら?
ガスリー:迷わず、同じことをするよ。ためらって11位に留まるくらいなら、攻めて10位を勝ち取る。たとえそのあとペナルティを受けて、11位に落ちたとしてもね。今回はイギリスと同じスチュワードじゃないから、違う裁定が出ると期待してるけどね。確か(セバスチャン・)ベッテルも、同じ不平を言ってたよね。

──スチュワードの一人だったトム・クリステンセンは、レース後に「素晴らしいオーバーテイクだった」と言ってましたよ。
ガスリー:僕も直接、そう言われた。彼がペナルティを出したんじゃないのは、たしかだね(笑)。

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