2014年ソチ冬季五輪フィギュアスケート男子の銅メダリスト、カザフスタンのデニス・テン選手(25)が同国の最大都市アルマトイの路上で19日、刃物で刺され、死亡した。ロシアの主要メディアが伝えた。カザフスタン内務省によると、テン選手は自分の車からミラーを盗み取ろうとした2人の男を見つけ争いとなり、右足の太ももを刺された。すぐに病院に運ばれたが多量出血で死亡した。出血量は3リットルに上ったという。ロシアのスポーツニュースメディア「スポルト・エクスプレス」(電子版)などによると、警察は2人のうちヌラルイ・キヤソフ容疑者を拘束、もう一人についても身元を特定し行方を追っている。 キヤソフ容疑者は23歳か24歳で、容疑を認めている。
今回の事件について、テン選手との親交が深かったロシアのスケート界からその死を悼む声が相次いだ。アイスダンスの元五輪メダリストで村主章枝選手のコーチを務めたこともあるアレクサンドル・ズーリン氏は「ばかみたいなミラーのために死んでしまった。犯人を追いかけるべきでなかったが、いまさら何を言っても仕方がない、どうしようもない」と死去を悔しがった。ロシアのニュースサイト「ガゼータ・ルー」が伝えた。
スポルト・エクスプレスによると、平昌冬季五輪女子銀メダリストのエフゲニア・メドベージェワ選手は「デニスはフィギュアスケート界で最も独創的な選手の一人だったと思う。彼の死を信じたくないし、信じられない。彼の笑い声を決して忘れない」とインスタグラムに書き込んだ。
浅田真央選手など多くの優秀な選手を育成した名コーチ、タチアナ・タラソワさんは「素晴らしい男の子だった。メダルを獲得するに値する個性があった。才能があって練習熱心で・・・・ 滅多にいない子だった。もう何も言うことはないわ」と語った。
エレーナ・ラジオノワ選手は「信じられない。10年以上親交がある。いつも冗談を言って、私を応援してくれた。将来について話し合うこともあったけど、あなたの夢は本当に壮大で、一人の人がこんなことをできるなんていつも驚いていた」と思い出をインスタグラムに綴った。
テン選手と言えば、米ボストンで2016年に行われた世界選手権男子ショートプログラムの公式練習で、羽生結弦選手が曲をかけた練習中にリンク中央でスピンを続け滑りを妨害。羽生選手が「それはねえだろ、おまえ」と声を荒らげたエピソードもあった。2人はその後、和解した。 (共同通信=太田清)