与党検討委結論先送り 望ましい案 明言せず 佐賀知事 FGT断念「違和感」

 九州新幹線長崎ルートを巡り、与党検討委は19日、整備方式決定を先送りする一方、全線フル規格かミニ新幹線の二択に絞り、「リレー方式」の固定化は「あってはならない」とした。財政負担増に難色を示す佐賀県の合意が得られるかが焦点だ。同県の山口祥義知事は、フリーゲージトレイン(FGT)が外れ選択肢が狭まった点を「違和感」とする一方、どういった整備案が望ましいのかは明言しなかった。同県議からは「慎重に議論する」との声も聞かれた。
 「地元合意が重要。短期間に決められるような話ではないと分かっていただいたのかな」。山口知事は報道陣に対し、先送りへ一定理解を示した。ただ「フルかミニを選ばなければならない立場ではない」との従来姿勢は崩さず、FGT導入の正式断念について「(導入は)国が提案した話で違和感がある」と不満を隠せなかった。リレー方式の固定化は「良いとは思っていない」としながらも、今後の議論について「知恵を出し合い模索することは分かっているつもり」などと抽象的な言い回しに終始した。
 「追加負担はできない」とする山口知事。その姿勢は、自身が出馬を表明している知事選(12月16日投開票)まで「変わらない」との見方が、佐賀県議会内や長崎県庁内から聞かれる。いつ折り合いが付くかは不透明な情勢だ。
 佐賀県議会佐賀空港・新幹線問題等特別委の土井敏行委員長は「FGTという前提が崩れた。慎重に議論する。佐賀県の財政規模は大きくなく、負担増は難しい」と悩ましげ。同県議会の九州新幹線西九州ルート整備促進議連の石井秀夫会長は「簡単に方向性を出す話にならない」と受け止め、木原奉文県議は「新しい段階。与党検討委の動きを注視し、県議会でももんでいかなければ」とした。
 JR九州の「2枚きっぷ」を使うと、佐賀-博多の特急往復は大人2260円。佐賀大2年の山本麻衣さん(20)は「高くない。新幹線は絶対必要なわけじゃない」と率直に話す。ただ、3月に駅前の西友佐賀店が閉店するなど佐賀駅周辺に活気があるとは言い難く、長崎県関係者は「新幹線駅ができれば民間投資が活発化し商業地域が成長する」と主張する。
 一方、嬉野市商工会の小原健史会長は「リレー方式の固定化が除外され、一歩前進だ」と強調。全線フル実現に意欲をにじませた。

与党検討委の中間取りまとめを受け、報道陣の取材に応じる山口知事=佐賀県庁

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