手荷物検査は盛り込まれず 新幹線殺傷事件で国交省が対策

 神奈川県内を走行中の東海道新幹線で6月、乗客の男女3人が殺傷された事件を受け、国土交通省は20日、列車内への梱包(こんぽう)していない刃物類の持ち込みを禁止するなどの緊急対策を公表した。新幹線を運行するJR5社に対し、盾や催涙スプレーなどの防犯用具や止血などの医療用具を車内に常備することも要請する。利便性やスペース確保の難しさから手荷物検査については盛り込まれなかった。

 同省によると、現状は鉄道営業法に基づく省令で、列車内に爆発物などの危険物の持ち込みは禁じられているが、刃物に関する明確な規制はない。本年度中をめどに省令を改正し、危険物に刃物を加える方向で検討する。改正されれば、私鉄を含めすべての鉄道に適用される。違反が発覚した場合、鉄道事業者は強制的に、刃物を持っている乗客を列車から退去させることが可能になる。

 JR5社に対しては、車内カメラや携帯端末などを活用し、車掌と指令所間で車内の状況をリアルタイムに共有できる仕組みの整備も求める。JR5社と警察庁が連携し、車内での凶悪事件への対応を想定した合同訓練なども行っていく。

 石井啓一国交相は20日の閣議後会見で「対策を順次実施に移し、東京五輪・パラリンピックも見据え、充実を図る」と述べ、菅義偉官房長官(衆院2区)も「引き続き対策の検討を進める」とした。

 事件は6月9日夜、新横浜-小田原間を走行中の、のぞみ車内で発生。男が女性2人を切りつけ、制止しようとした男性1人を殺害した。

事件発生後、小田原駅に停車中の新幹線=9日午後11時30分ごろ、小田原市

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