高齢化社会の災害復興

 西日本豪雨で各地に甚大な被害が出てから半月余り。死者数は22日現在、15府県で224人に達した。身元が判明した死者のうち、約7割が60歳以上だったと聞く▲若かったなら素早く避難できたかもしれないが、機敏な行動を取れずに逃げ遅れ命を落とした高齢者は多いだろう。何とも痛ましい▲人的被害の大きさは、長崎市とその周辺で299人の犠牲者を出した1982年の長崎大水害以来という。ただし長崎大水害では、犠牲者に占める61歳以上の割合は約2割にとどまった。高齢者が避難弱者であることは今も昔も変わらないはずだから、この差は地域社会の高齢化の進展を反映しているといえるかもしれない▲高齢者世帯では被災した家の後片付けもなかなか進まないだろう。店や工場が被害に遭った年配の自営業者は事業継続の意欲を保てるだろうか。そして復旧工事を担う建設業者は、ただでさえ若年労働力不足の中、十分なマンパワーを確保できるだろうか▲復旧復興の担い手の中心世代が若ければ、ダメージを乗り越える力もみなぎりやすい。だが、今の地域社会は必ずしもそうではない。昔に比べプラスアルファの対応や支援が必要になるだろう▲きょうで長崎大水害から36年になる。西日本豪雨の被災地と同時にあらためて足元を見つめたい。(泉)

© 株式会社長崎新聞社