奇怪なツノゼミ、美しいゴキブリ 科博の「昆虫」展

なんでこんな形に? マルヨツコブツノゼミの拡大模型(国立科学博物館)

 東京・上野の国立科学博物館で開かれている「昆虫」展は、虫好きではない人も虫好きになる、とまでは言わないが、虫たちを違う目で見るようになるかもしれない、驚きの世界だ。

 最初の部屋で、いきなり巨大昆虫たちが待っていた。体長2mほどに拡大したハチ、カ、クワガタ、チョウ、セミ。研究者が隅々までチェックしたという、巨大ながらも精巧な模型に、あっけにとられる。カは、こんなに長くて太い針を肌に刺すのか、いやいやこれは実物の何百倍だからほんとは極細のはずだ…と、目の前のものの大きさに対応できず、くらくらする。

 展示は、(昆虫の)多様性、生態、身体能力などのテーマに分かれ、巨大なモニターから虫眼鏡までいろいろな道具を使って、虫のすべてを見せてくれる。会場全体が「飛び出す図鑑」のようで楽しいが、目玉はいくつかある。

 日本最大の甲虫、ヤンバルテナガコガネの「ホロタイプ標本」(その種の基準となる、世界に一つしかない貴重な標本)▽高い天井まで計5万点の標本がびっしりと並ぶ「標本の回廊」▽この展覧会のためにマダガスカルまで行って採集してきたセイボウ(青蜂)の新種の標本(この種には、来場者の名前の一つから学名をつけることになっている)などなど。

 筆者にとって忘れられないのは、ツノゼミという虫たちだった。体長数ミリなので肉眼では見にくいが、35倍に拡大した模型のマルヨツコブツノゼミというのが、絶句するほどヘンな形なのだ。ほかのツノゼミたちもユニークな形ぞろいだが、彼らがなんでこんな形に進化したのかは、研究している人も「わからない」という。その次の「Gの部屋」も面白かった。生きて動き回る世界各地のゴキブリは、ゴキブリという名前が気の毒なほど美しい。翌日から家のゴキたちに愛着が沸くこと請け合いだ。

 しかし、よくこんなものたちを見つけ出してくる人たちがいるものだ。

 そんな研究者たちの生態を、最後の部屋で見ることができる。採集の様子を写した動画や、採集の道具などが展示される中で、展覧会を監修した虫博士、野村周平さんが考案した「ノムラホイホイ」に目が止まった。ペットボトルを切って表面を塗装する簡単な工作だが、野村さんの話では「1日で容器がいっぱいになるほど」虫がホイホイ取れるという。どうやら塗装に秘密があるらしい。虫たちもすごいが、研究者たちも面白い。10月8日まで、休館日は9月3、10、18、25日。 (共同通信=宇野隆哉)

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