創成館とのライバル対決に敗れ、18度目の頂点へたどりつけなかった“夏の海星”。終盤に点差は開き、加藤監督も「完敗」と力負けを認めたが、チームは今の力をしっかり発揮した。6回2失点と粘投した先発荒木は「悔しいが、出し切った」と涙は見せなかった。
感謝のマウンドだった。準決勝の長崎商戦は失点4で初回に途中降板。そんな逆境を仲間がはね返し、決勝に導いてくれた。「今度は自分が恩を返す」。強い思いで相手打線に立ち向かった。
身長180センチの本格派右腕。創成館の先発川原とは中学時代、ともに硬式野球の九州選抜で台湾に遠征し、大会前には「決勝で投げ合おう」とLINE(ライン)を送った仲だ。この日、直球は自己最速の148キロをマーク。捕手太田が「気持ちがこもっていた」と振り返る投球で、五、六回はいずれも3者凡退に抑えた。
この力投に打線も応えた。六回、先頭で打席に立った代打小野が左翼席に追撃の一発。「荒木のためにも何とか塁に出たかった」という一振りが、自身公式戦初の本塁打につながった。
荒木はひじを痛めて昨秋から約半年間、投球できなかった。そこから奮起して立ったこの日の先発マウンド。「みんなを信じて思い切りやれた。もっと成長して加藤先生に恩返ししたい」。卒業後も「野球を続ける。将来はプロに」と言う未完の大器は、もう一度感謝の言葉を口にして高校野球のマウンドを降りた。