馬刺し高騰続く 肥育用カナダ産輸入減、希少部位は3倍近く

カナダからの輸入馬が減った影響で、馬刺し用肉の店頭価格は1.3倍以上に値上がりしているという=6月、熊本市中央区の村山精肉舗

 熊本の味「馬刺し」が大ピンチだ。国内の流通馬肉の多くを占めるカナダ原産馬の輸入がこの数年減り、価格が高騰。業界関係者は危機感を募らせる。「このままでは家庭や飲食店から馬刺しが消えかねない」-。県内外のファンにとっても大問題だ。

 「最上級の霜降りバラ肉の卸値は、1キロ3万円近くまで上がった。まだ落ち着く兆しはない」。馬肉中心の卸店「宮本精肉舗」(熊本市中央区南熊本)の宮本紀之社長(54)は頭を抱える。

 店頭小売価格はさらに深刻だ。同区新市街の「村山精肉舗」では、数年前まで100グラム2400円だった霜降りバラ肉馬刺しが3150円に。希少部位のフタエゴは同400円から1080円と3倍近くに急上昇。人気のレバーは店頭に並べず、得意先だけに限定配送している。

 馬刺しは家庭の食卓にも欠かせない「熊本の味」。農林水産省によると、県内の馬肉生産量(枝肉)は2316トン(2015年)。全国の45%を占め、断トツの1位だ。

 村山精肉舗の常連の主婦(65)は「親戚や友人に持って行くと喜ばれるが、100グラム千円以上はとても出せない」。大好物だという男性サラリーマン(54)は「ウナギに馬刺し…かつての庶民のスタミナ源が次々、高根の花になっていく」と嘆く。馬肉料理店「むつ五郎」(同区花畑町)では、料理の価格を据え置くため量を減らして対応しているというが、「もう限界」と代表の小山公輔さん(40)。

 県内で流通している馬肉はカナダから輸入した馬を肥育したものが多くを占めるという。だが、11年に富山や福井で起きた牛ユッケ食中毒事件を機に、生肉への抵抗感などから馬肉の需要も一時的に低迷。さらに、当時の円安の影響もあり、カナダの生産農家の多くが日本向けの「馬」より、世界的に需要が多い「牛」に切り替えたため、安定輸入が難しくなったという。

 馬肉製造販売の大手「千興ファーム」(御船町)では、カナダから年間2千頭以上輸入していたが、ユッケ事件後は4割減。日本産の肉用馬は後継者不足でさらに貴重という。

 同社は昨年から、フランスの牧場と提携。輸送費が比較的抑えられるカナダルートを維持しつつ、ルート開拓も進める考えだ。

 菅浩光社長(40)は「馬肉の高騰は、業界共通の大きな課題」と指摘。「輸入に頼るだけでなく、国内生産も増やす必要がある。熊本の味を守るためにも、業者間の連携はもちろん、国、県の協力も不可欠だ」と訴える。(臼杵大介、堀江利雅)

(2018年7月23日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

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