北朝鮮の首都で「白昼の銃撃戦」…金正恩氏の足元で渦巻くリスク

北朝鮮の首都・平壌の中心部で6月1日、銃撃戦が発生したもようだと韓国のニュースサイト、リバティ・コリア・ポスト(LKP)が伝えている。

北朝鮮国内の情報筋がLPKに伝えたところでは、事件は同日の白昼、西平壌にある人民武力省庁舎の近くで発生。朝鮮人民軍(北朝鮮軍)保衛司令部が将校1人を逮捕しようとしたところ、この将校が抵抗し、銃撃戦に発展したという。

将校は取り押さえられたというが、それ以上、LPKは事件の詳細に言及していない。仮に事実であっても、この事件が大きな混乱の引き金になることはなさそうだが、注目すべき情報と言えるかもしれない。

北朝鮮軍の軍紀の乱れは、今に始まったことではない。とくに末端部隊の乱れ方は激しく、窃盗や強盗、性的虐待など何でもアリの様相だ。

しかしさすがに、エリート軍人たちは例外だと思っていたが、必ずしもそうではないようだ。今年3月には朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の大佐が、重要施設の壁に「落書きをしまくった」ということで公開処刑される出来事があった。

北朝鮮では、建物の壁などに「落書き」が見つかると、政治的事件として扱われるためだ。また、警備と監視がどこよりも厳しいはずの最前線、米韓軍と対峙する板門店(パンムンジョム)では、北朝鮮兵士が追手から銃撃を受けながら亡命するというショッキングな事件も起きている。

このときは北朝鮮軍と米韓軍との衝突には至らなかったが、最前線では何が起きるかわからない。3年前の8月には、北朝鮮側が仕掛けた地雷に韓国軍兵士が接触し、身体を吹き飛ばされる事件があった。これをきっかけに南北は軍事対立を激化させ、一触即発の事態にまで発展したのだ。

メディアの一部には、北朝鮮問題と関連し、「軍部強硬派が金正恩党委員長の政策に不満を持っているのではないか」との分析をしたがる向きがある。筆者は、そのような見方はしていない。不満があるとするなら、政策というよりは、食糧配給など処遇面に対するものだ。

しかし、巨大な北朝鮮軍の内部にストレスが充満すれば、それはそれで重大な安保リスクだ。核戦争など国家間の衝突リスク以外にも、危険なことはたくさんあるのだ。

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