『ヒトラーを欺いた黄色い星』 ベルリンに潜んだユダヤ人の実話を再現する

(C)Peter Hartwig

 第2次大戦下のドイツで、首都ベルリンに残りながら終戦まで生き延びたユダヤ人が約1500人もいた。1943年6月19日に、ゲッベルスはベルリンからユダヤ人を一掃したと宣言したが、実際は国外へ逃げず(あるいは逃げられず)に、善意に支えられながら最後まで潜伏を続けた者も大勢いたのだ。これは、そのうちの4人を取り上げた知られざる実話。

 ドイツ人兵士に成り済まして市内の空室を転々とし、ユダヤ人のために多くの偽造身分証を作ったツィオマ・シェーンハウス。ドイツ国防軍の将校にメイドとして雇われたルート・アルント。活動家の家に引き取られ、反ナチのビラ作りに協力したオイゲン・フリーデ。髪をブロンドに染めて別人になり、映画館で知り合った男性の母親に匿われたハンニ・レヴィ。4人は、インタビューに答える形で映画の中にも登場する。

 というより本作は、そのインタビューと、彼らの若き日を俳優が演じる再現ドラマ、さらにそこに当時のニュース映像が差し挟まれる、劇映画とドキュメンタリーのハイブリッドな作品なのだ。この構成=編集が巧妙で、とりわけ本当に当時の映像を探してきたのか疑いたくなるほどマッチしたニュース映像が、映画の大半を占める再現ドラマに生々しい説得力を与えている。本作は、戦争を風化させないための貴重な証言であると同時に、映画の一つのスタイルとしてもユニークだ。★★★★☆(外山真也)

監督・脚本:クラウス・レーフレ

出演:マックス・マウフ、アリス・ドワイヤー、ルビー・O・フィー、アーロン・アルタラス

7月28日(土)から全国順次公開

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