被爆者の故・谷口稜曄さんの体験映画化 「ナガサキの郵便配達」原作 長崎県でロケ、2019年完成

 核廃絶運動をけん引した被爆者の谷口稜曄(すみてる)さん=2017年8月、88歳で死去=をモデルに、核兵器の恐ろしさを訴えたノンフィクションの著作「ナガサキの郵便配達」を原作とした映画が製作されることが23日までに、関係者への取材で分かった。映画のロケは今夏から長崎県などで計画され、2019年完成予定。公開時期は未定。また、長崎原爆忌の8月9日に合わせ、原作の日本語訳が復刊される。

 関係者によると、原作は第2次世界大戦時に英国空軍大佐だったジャーナリストのピーター・タウンゼント氏=1995年死去=。タウンゼント氏は1982年に来崎。郵便配達中に長崎原爆で被爆して背中に大やけどを負った谷口さんの悲劇と後遺症などと戦った生きざまを中心に取材したほか、被爆者の故・山口仙二さんや在外被爆者の被爆体験もまとめた。1984年、イギリスとフランスの両国で出版。日本では翌年、フランス語版を日本語に翻訳した本を早川書房が出版したが、谷口さん以外の被爆者の話は省かれていた。

 映画の物語は、タウンゼント氏の娘で元世界的トップモデル、イザベル・タウンゼントさん=フランス在住=が父の取材先である長崎など足跡をたどり、父からのメッセージをひもといていく。監督と脚本は、川瀬美香氏が務める。製作会社は「Art True Film」(東京)。

 ■「8・9」に日本語訳復刊

 一方、復刊は「ナガサキの郵便配達制作プロジェクト」(齋藤芳弘代表)が手掛け、タウンゼント氏の原文を忠実に日本語に訳した。同プロジェクトは2015年ごろ発足。齋藤代表が、生前の谷口さんからこの本の日本語訳を頼まれ、実現につながったという。寄付を募り版を重ねていく方針。

 齋藤代表は「平和の教科書として、次世代に読みつないでいける本にしたい」と話した。初版の発行部数は1万部。将来的には長崎県内の高校生に無料で配布したい考え。スーパーエディション社刊、四六判、260ページ。長崎原爆の日にちなみ、価格は809円(税別)。

谷口さんをモデルに核兵器の恐ろしさを訴えたノンフィクション「ナガサキの郵便配達」を原作に製作される映画のチラシ(design hehe提供)
復刊される日本語版「ナガサキの郵便配達」の表紙(ナガサキの郵便配達制作プロジェクト提供)

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