大学心理学科のトレンド、高校生たちがめざす資格と将来像

缶飲料のパッケージの印象と宣伝効果
心構えによる抑うつ改善効果
店員のジェスチャーの有無が消費者行動と心理に与える影響
犯罪とSNSの接点

―――これらは、埼玉工業大学 人間社会学部心理学科の在学生・卒業生の研究テーマ。

6~8月、6回にわたり実施される同大学のオープンキャンパスで、心理学を専攻する学生たちと、心理学を学びたい高校生たちの交流を垣間見た。

埼玉工業大というとまず、その大学名から理工系の単科大学という先入観を抱いてしまう。が、実際に学内に入ってみると、意外にも女子大生が多い。

工学部と人間社会学部の2学部を構えるこの大学では、旧来の文理という隔たりなく入学生を募る。

最近では、AI専攻新設や、自動運転技術ベンチャーなどを立ち上げ、AI人材育成と大学発ベンチャーの両輪で先端技術分野の拡充を図っている。

そんなトレンドを行く埼玉工業大の心理学科には、どんな学生がめざし、どこをめざすのか……?

公認心理師をめざせるカリキュラム

埼玉工業大学 心理学科のオープンキャンパスに訪れた高校生たちに聞くと、「悩みを抱える子どもたちの力になりたい」「ストレス社会に寄り添うカウンセラーになりたい」といった声が返ってくる。

こうした思いを持った人たちが取得をめざす資格のひとつが、昨年施行された国家資格「公認心理師」。

公認心理師は、学校のスクールカウンセラー、病院の心理職として、悩みを持つ人のカウンセリングや心理検査などを担当。

学校や病院のほか、児童相談所、家庭裁判所、警察、企業の社内相談室、就職支援センターなどで活躍する。

この日、高校生が注目していたのは、この公認心理師にむけたカリキュラム。同大 心理学科と大学院は、公認心理師の受験資格が得られるカリキュラムに対応。学科ガイダンスでは、高校生たちに「早くも今年度から学内外の施設で実習をスタートさせている」と紹介していた。

現場さながらのトレーニングも積める

埼玉工業大学は、JR高崎線 岡部駅前に臨床心理センターという施設を、同大キャンパスとは別に構えている。

この臨床心理センターは、地域住民むけ心理相談をはじめ、理学セミナー、子育て支援、幼児グループなど、地域に開かれた心理相談室もある。

また、公認心理師をめざす学生は、同センターで実習を重ね、地域むけ公開セミナーなどにも参加する。

心の悩みを抱えた人の個別相談を受け、悩みの解決へと導く心理相談室では、臨床心理士の資格を持つ教員とカウンセラーに加え、心理学を専門に学ぶ大学院生が、教員らの指導のもとで相談にあたる。

高校生たちは同施設で、自分たちの将来の仕事現場をイメージ。さながらトレーニングも積める現場に入り、箱庭療法の設備や、大中小のプレイルームを見学。

この日は、緊張する高校生たちに「うちの大学は学生と教員の距離がすっごい近くて、静かな学内で仲良く学べるところがほかの大学と違うとこ」と語りかける姿があった。

テクノロジーとチームワークでアプローチ

今回、研究室公開で小野広明教授の臨床心理学(犯罪・非行臨床)研究室にいた心理学科4年の中村さんと澤上さんは、「あっという間の4年間だった」と振り返る。

「わたしは来年、一般企業の営業職に。ここで学んだ心理学分野のスキルを、営業活動、販促活動にいかしたい」と中村さん。

澤上さんは「大学院に進学し、公認心理師の資格取得を目指す。思春期外来などで、子どもたちと関わりたい」と話していた。

“人間の不思議”についてテクノロジーとチームワークでアプローチしていく同大の心理学科。同学科長の大塚聡子教授は、「心理学科の学生は入学後、ノートPCが与えられ、SPSSやR、SuperLab、PsychoPyといった統計解析のツールや心理学実験向けのプログラムなどをいっしょに学んでいく」と話していた。

―――次回のオープンキャンパスは、7月29日、8月5日、8月12日、8月26日。

© 株式会社エキスプレス