開発業者の一斉放火疑いも  ギリシャ、70人超焼死の悲劇

By 太田清

24日、ギリシャ・アテネ近郊マティで、焼け焦げた車の残骸が並ぶ中、立ち尽くす女性(AP=共同)

 ギリシャ首都アテネ近郊で23日に起きた山林火災の被害は広がり、地元メディアによると24日までに死者は少なくとも76人、負傷者は187人に達した。行方不明者が100人に上るとの情報もあり、死傷者はさらに増える恐れがある。当局が焼け跡などでの捜索活動を続けている。同国では2007年、南部ペロポネソス半島などで大規模な山林火災が相次ぎ、計60人以上が死亡したが、今回の火事はこれを上回る悲劇となった。 

 アテネの東にあるリゾート地マティでは一カ所で幼児を含む26人の焼死体が見つかった。海岸に逃げようとしたものの断崖だった上に火の手に囲まれ、身動きがとれなくなったものとみられる。家族や友人同士と思われる数人が、抱き合うような形で最期を迎えた焼死体も多く見つかった。 

 火事が広がった理由として、熱波で空気が乾燥していた上に、強風で火の手があおられたことが挙げられているが、そもそも火事が起きた原因として、トスカス市民保護相は「火事は偶然に発生したものではない」と放火の可能性を示唆した。 

 ギリシャ系米国人を主な読者層としている米誌ナショナル・ヘラルド(電子版)によると、ギリシャでは近年、焼け野原に対する開発規制がないことに着目した開発業者が山林に放火するケースが相次いで報告されており、今回の火災もそうした放火の恐れがあるとして当局は捜査に乗り出した。複数地点で一斉に火の手が上がったことも、開発業者による放火の疑いを裏付けているという。 

 ギリシャ国防省は放火の恐れがある地域に軍隊を派遣、ドローンなどを活用して警戒に乗り出した。 

 ギリシャでは昨年8月にも、首都アテネ北部など約90カ所で山林火災が相次いで発生。イオニア海に浮かぶ観光客に人気のリゾート、ザキントス島などで非常事態が宣言されたが、この際も放火の疑いが指摘された。 (共同通信=太田清)

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