北朝鮮で「少女搾取」がまた始まった…金正恩外交の副作用

北朝鮮の金正恩党委員長は、今年だけですでに3回も訪中。習近平国家主席と会談を繰り返し、中国との関係を大幅に改善させた。

そのことが、「北朝鮮の児童に対する労働搾取という副作用を生んでいる」と、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。中国企業との取引が増えるに従い、
北朝鮮の外貨稼ぎ会社が10代の児童を低賃金で雇っているためだ。

売春で破滅

平版北道(ピョンアンブクト)の情報筋がRFAに語ったところでは、中国企業から発注が増えているのは、衣類や造花、カツラ、ツケマツゲの委託加工だ。

「外貨稼ぎ会社は衣類の生地をはじめ、造花やツケマツゲの材料を中国の丹東から仕入れている。生地は国営のアパレル工場に納入されるが、造花やツケマツゲの材料は学校が密集する地域に運ばれる。10代の学生たちを労働力としているためだ。とくにツケマツゲの加工は、手先の器用な若い女性が適任なのだが、20代の女性たちはより高給の工場労働者となることを選ぶ。そのため外貨稼ぎ会社は、ほかに働き口のない10代の少女たちを主に雇用しており、彼女らには成人の半分しか賃金が支払われない」(情報筋)

北朝鮮の労働法では、16歳未満の労働は禁じられている。それにもかかわらずこうした現象が見られるのは、国家主導の計画経済が破たんし、なし崩し的に資本主義化が進む中、都市と地方間の格差、所得格差の拡大が進行している。貧困層の、とくに女性たちの窮状は甚だしく、少なくない人々が売春に走り身を亡ぼす。

工場に職を得た少女たちも、いくら頑張っても報われない例が多いようだ。以前にも紹介したエピソードだが、中国に輸出するツケマツゲ工場に雇われた少女たちの境遇について、平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は次のように語っていた。

「工場側の労務管理は非常に巧みです。たとえば、工員たちに『ツケマツゲひとつ当たり、0.05米ドル(5セント)を支給する』と伝える。それが高いのか安いのかわからない少女らは、とにかく数をこなそうと必死で働くのです。また、旧正月などの祭日に際しては、普段は後日まとめ払いの賃金を日払いに切り替える。収入は変わらないのに、少しでも早くおカネを家に持ち帰りたい彼女たちは、文句も言えず労働に精を出すのです。地域によっては、9歳の子どもまでが工場で働いていると聞きます」

こんな生活のために学業はおろそかにならざるをえず、競争社会化する世の中を生き抜くのに必要な知識や教養も身につかない。

平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は、「中朝関係が悪くなると委託加工が減り、子どもらは学校に通うが、中朝関係が良くなると、貧しい家の子どもたちは学校へ行かず働くことになる。親たちは、幼い娘が暗い部屋で夜通しツケマツゲを作り、視力と健康を害するのを見ながらも、どうすることもできない」と語る。

アメリカ人監督ミカ・X・ペレドの『女工哀歌』は中国のアパレル工場の実態を追ったドキュメンタリー映画だが、それより遥かに悲しい実態であると筆者には思える。

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