のみ込みやすい「なめらかすてら」 来月発売 長崎県内の医療、食品関係者 誤嚥防ごうと開発

 飲食物を飲み込む際に誤って気管に入る「誤嚥(ごえん)」により肺炎や窒息で亡くなる高齢者が後を絶たない。水分量が少ないカステラに寒天を加えることで飲み込みやすくした新商品「なめらかすてら」を、県内の医療や食品関係者らが完成させた。「お年寄りにより安全にカステラを食べてもらいたい」との狙い。開発に携わったメーカーが8月中旬から販売を始める。
 「窒息で亡くなる人は全国で毎年4千人以上。日本人の死因の3位は肺炎で、その多くが誤嚥が原因。交通事故よりも死亡者ははるかに多い」
 長崎大学病院の歯科医師、三串伸哉さん(39)はそう危険性を訴える。
 食べ物をのみ下す機能などが衰える「嚥下障害」は、脳梗塞や認知症、加齢などが原因で高齢者に多い。「安全に食べられるカステラを開発すれば、多くの人に嚥下障害に興味を持ってもらえるかもしれない」。三串さんのそんなアイデアが、開発のきっかけだった。
 医師や歯科医、食品メーカーや菓子職人ら約80人が昨年1月から開発を始め試行錯誤を重ねた。介護施設の運営者が試食に協力。洋菓子職人が製造法や味、食感を監修した。
 なめらかすてらは、焼き上げたカステラに寒天溶液を染み込ませる。生地が舌の上で溶けていくような食感が特長という。試食した高齢者からは「のみ込みやすい」「しっとりしている」と好評だったという。
 三串さんは「嚥下障害による肺炎や窒息は一般の人が学び注意をすれば予防できる。この商品をきっかけに嚥下障害に関心を持ってほしい」と呼び掛けている。
 商品は雲仙市でカステラを製造している「みかど本舗」の通販サイト(http://mikado-honpo.com/)で注文を受け付けている。

寒天を使ったのみ込みやすい「なめらかすてら」(長崎大学病院提供)
嚥下障害について説明する三串さん=長崎市、長崎大学病院

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