肺MAC症の特徴 中高年女性に急増

 しつこいせきや痰[たん]が続く慢性の感染症「肺非結核性抗酸菌症」、中でも「肺MAC[マック]症」が中高年の女性を中心に急増しています。感染の経路や女性に多い理由など、未解明の部分が多く、専門的に診療できる医療機関は限られています。県内でも数少ない専門医、国立病院機構熊本南病院(宇城市松橋町)の山中徹・呼吸器科部長に聞きました。(高本文明)

 -肺非結核性抗酸菌症とは、あまり耳慣れない名前です。

 「肺の結核を引き起こす、結核菌ではない別のタイプの抗酸菌による感染症です。結核は、結核菌が人から人へ感染して発症しますが、肺非結核性抗酸菌症は、人から人へうつることはありません」

 -抗酸菌とは。

 「抗酸菌は、結核菌と同じ抗酸菌属の仲間で150~200種類ほどあり、一部の種類が肺非結核性抗酸菌症を引き起こします。最も多いのが、マイコバクテリウム・アビウムや、マイコバクテリウム・イントラセルラーという菌が原因となる『肺MAC症』と呼ばれるタイプで、全体の9割を占めます」

 -主な症状は。

 「最初は、せき、痰、それから微熱が出て、ときどき血痰[けったん]が出ます。倦怠[けんたい]感や食欲不振も起きます。患者さんには、やせた方が多いようです」

 -発症後、どういう経過をたどりますか。

 「診断がついて何十年も変わらない方もいますし、自然に改善する方、次第に悪化する方もいます。全体的にみると、数年から数十年といった単位で、極めて緩やかに少しずつ悪化していきます。一気に悪くなる方は多くはいません。徐々に進行していくと、肺の炎症や空洞化が進み、呼吸困難に陥ります」

 -抗酸菌は、どんな所に潜んでいますか。

 「肺非結核性抗酸菌症を起こす抗酸菌は、土壌や水など自然界に広く分布しており、環境の中にはどこにでもいる菌です」

 -患者が増えているそうですね。

 「患者の増加は世界では日本だけで、全国的に中年から高齢の女性に多くなっています。年間約1万9千人の新規患者が発生していると推計されており、結核を超えています。より病原性の高いアビウムが全国的に増加傾向にあります」

 -どんな人が感染しやすいのですか。

 「かつては結核にかかった人が引き続き感染・発症していました。現在は、結核患者は減る一方、肺非結核性抗酸菌症が増えています。過去に基礎疾患がなくても発症する患者さんが多く、基礎疾患との関係は、はっきりしたものがありません。感染する人は気管支の粘膜の表面での免疫に何らかの問題があるため感染しやすいのではないかという説があります」

 -女性に多いのはなぜですか。

 「抗酸菌は風呂場や台所など湿った所に多く繁殖しています。一説には、水仕事をする機会の多い女性に患者が多いといわれていますが、はっきりしたことは分かっていません」

 -診断はどう実施しますか。

 「症状はないものの、胸部の検診で異常な陰影が見つかり、受診する方が多いです。エックス線撮影やCTスキャンによる画像所見から判断するとともに、異なる日に採取した2回の痰から原因菌が培養された場合に、肺非結核性抗酸菌症と診断します。気管支鏡というカメラを使って肺の中を洗浄した液を採取し、抗酸菌が含まれているかどうかを調べる場合もあります。肺MAC症では血液検査での抗体の有無が参考になることがあります」

 ※次回は、肺MAC症の治療を中心に紹介します。

(2018年7月25日付 熊本日日新聞夕刊掲載)

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