西武サヨナラ呼び込んだピンチバンター岡田 「プレッシャーしかなかった」

10回の大事な場面でバントを成功させた西武・岡田雅利【写真:荒川祐史】

延長10回無死一塁で代打で登場し犠打を決めた岡田

■西武 6-5 オリックス(25日・メットライフ)

 序盤は点の取り合いで4-5と西武劣勢で迎えた9回。オリックス守護神・増井から森がセンター後方へ犠飛を放ち同点に追いつく。そして延長10回、キャプテン・浅村の適時打で西武がサヨナラ勝ち。3連勝で今季両リーグ最速の50勝に到達した。

 西武が1点を追いかける展開で迎えた9回。今季リーグ最多セーブで未だ無敗のオリックス守護神・増井に対し、先頭の浅村がヒットで出塁。その後無死一・三塁で森がセンターへ犠牲フライを放ち同点に追いついた。

「どうにか出塁しようとする気持ちと、彼の技術が生んだ打席」と、ビハインドの9回、先頭打者で追い込まれながらヒットで出塁したキャプテンの打撃を評価した辻監督。当の浅村自身は「序盤に失点はあったが、諦めることなく全員でつないでいった」と“つなぎの意識”が好結果につながったことをお立ち台で語った。

「絶対送るんだという執念が見えた」と辻監督が試合後に、勝因の一つに挙げていたのが延長10回。先頭打者の中村のヒットで無死一塁の場面を作り、メヒアの代打に岡田を送った場面だ。

 代打で登場した岡田は「ベンチ裏で『中村さんが出たらバントいくから』と言われていた。メヒアの代打なので、プレッシャーしかなかった」と、打席に向かう前の心境を語った。

辻監督は「チームで1、2を争うくらいバントは上手い」と信頼を置く

 ネクストバッターズサークルから打席に向かう際、ベンチに戻るメヒアから、胸辺りを軽くポンポンと叩かれ、何やら激励を受けていた岡田だったが、そのことについて尋ねてみると「たぶん『しっかりやれよ!』ってことだと思いますが、メヒアのこととか何も考えられずにいったので…」と、とにかくバントを決めることだけに集中していたことが伺える。

 辻監督も「チームで1、2を争うくらいバントは上手い」と、能力の高さを認めてのピンチバンターだったが、「今のライオンズは小技が少ない」と岡田も語るように、西武のチーム犠打数はこの試合前で32と12球団で一番少ない(12球団最多はオリックスの80犠打)。その中での代打指名に「こういうところではしっかり決めておかないと勝ちに繋げられない」と、自ら失敗が許されないことを自覚して、打席に向かっていた。

 初球のファールに「ダメかな」と、一瞬気弱になったものの「なんとか進めたら、次は秋山さんなので、(おそらく歩かされて)一、二塁になる。成功させなければ」と自らを奮い立たせてのスリーバント成功だった。

「今は放心状態。(失敗していたらと思うと)ぞっとする」と最後は持ち前の笑顔を見せた岡田。辻監督も「緊張した中で決めるのは、なかなか難しいと思うがよく決めてくれました」と、期待に応えてくれた岡田に賛辞を送っていた。

 苦しんだ末のサヨナラ勝利に「大きな一勝。ヘボ監督なので、(9回の同点犠飛以降の判断に)迷いがあって少し後悔していたが、昨年もあったけど選手が助けてくれた。選手に感謝です」と指揮官。ロッカールームへ引き上げる際、ちびっこファンから「辻監督、ナイスですよー!」と、声をかけられ「ナイスじゃないよー」と、笑顔で答え、球場を後にした。(岩国誠 / Makoto Iwakuni)

© 株式会社Creative2