過酷な現状 日本サッカー界におけるコーチ問題

u-6、u-12、u-15、u-18と様々なカテゴリーで指導するサッカー指導者達。今回はそんな指導者の現状についてジュニア、ジュニアユース年代をを中心に触れていく。

多数のボランティアコーチと安月給の街クラブコーチ達

2017年度、第4種(u-12世代)の登録チーム数8717のうち4140が少年団となっている。少年団はクラブチームやスクールと違い、会費が1ヶ月で2000円~3000円でコーチは

ボランティアがほとんどである。

さらに、東京都だけで310ある中学校のサッカー部の指導者達も当然、ボランティアに含まれるため、これだけ見ても多くのボランティアコーチがいることが分かるのではないだろうか。

では、少年団や中学校の部活と違ってお金を貰って指導をしている街のクラブチームはどうだろうか?2016年度に全国クラブユースサッカー連盟に登録しているチームはu-15(中学生年代)だけでも

1390チームある。

そのクラブチームのコーチ達の多くはお金(給料)を貰ってサッカーを指導している。しかし、その現状はとても厳しい状況にある。とある首都圏の街のクラブチームでは、活動が週5回程度あるが、月給は手取りで13万前後だという。

また、別の首都圏のクラブチームでは、u-15年代とu-12年代のチームやスクールの両方で週6回指導あるにも関わらず、月給は18万ほどだったという。

こうなると当然、生活に余裕はなく、ましては結婚ともなるととても生活できる収入ではない。

実際、筆者である私の知り合いにもサッカースクールに正社員として勤めていたが、給料の関係で他の業界に転職した知人は何人もいる。

サッカースクールが普及し、サッカーの給与だけで生活できるコーチは以前より増えてはいるが、まだまだ十分に生活できるだけの給料を貰えていないのが現状だ。

収入以外の問題点も

少年団や部活動のボランティアコーチもクラブチームやスクールのコーチも「指導者」という括りの中に含まれ、多数の指導者がいる。専業でない多くのコーチがいること以外にも、日本サッカー界は大きな問題を抱えている。

それは、指導者が学べる環境が少なく、指導者を育てる人材が不足していることにある。多くの指導者達は動画や本で見たものを実際の指導現場で実践し、指導にあたっているだろう。

日本サッカー協会が発行している公認ライセンスはキッズリーダー、D級~S級まであり、それぞれで講習会が行われている。しかし、それらの講習会以外で指導を学べる環境が不足している。

本や動画で「インプット」はできても、「アウトプット」できる場は実際の指導現場くらいしかない。協会以外にも指導者講習会などが行われていることもあるが、いずれも定期的なものはほとんどなく、1日単位で完結するものが多い。

多くの指導者は指導スキルを身に付けたくても環境や時間がなくて、身に付けられない状況がある。

街クラブのコーチ達は「指導スキルも身に付けられなければ、収入も低い」と言って辞めていってしまうことが多いという。

優秀な選手を育てる前に、まずは選手を育てる指導者を育てる必要がある。そして、良い指導者を多く輩出するには、労働時間や収入、学べる環境などが一定のレベル以上で揃わないと難しい状況のが現実である。

指導者が日頃から指導法を学び、収入や時間に余裕のある状態で指導することが日本サッカーの強化につながる可能性は大いにある。

そして、これらの「コーチ問題」が改善されるには、日本にサッカー文化が根付いていないのも原因の1つと考えられる。深刻な状況に陥っている「コーチ問題」に対して、今後日本サッカー協会がどのような改善策を見出し、どのように変化していくのかに注目したい。

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