「属人的なシステムでは成長しない」田嶋幸三会長、会見全文書き起こし

26日、日本サッカー協会は記者会見を開き「森保一氏を新たな代表監督に招聘した」と公式発表した。

そこでは田嶋幸三会長による日本代表強化の方針、関塚隆技術委員長によるロシアW杯の分析結果なども発表された。

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今回は記者会見の冒頭で行われた日本サッカー協会会長田嶋幸三氏による声明を紹介する。

田嶋幸三 みなさんこんにちは。このように多くの方に集まっていただき感謝いたします。

後ほど新しい監督について記者会見をさせていただきますが、その前にこれまでの経緯について関塚委員長と解説いたします。

私達には『2005年宣言』があります。サッカーを通じて豊かなスポーツ文化を創造し、人々の心身の健全な発達と社会の発展に貢献する。そのことを理念として私達は活動しております。

サッカーの普及に努めて、スポーツをより身近にすることで、人々が幸せになれる環境を作り上げる。

サッカーの強化に努め、日本代表が世界で活躍することで、人々に勇気と感動を与える。まさに日本代表は今回そのようなことを実現してくれました。

残念ながらベスト8に入ることはできませんでしたが、日本に盛り上がる雰囲気を作ってくれました。そのことはみなさんもご承知のとおりです。

常にフェアプレーの精神を持ち、国内のみならず世界の人々と友好を深め、国際社会に貢献する。

我々がポーランド戦のあとベスト16に進出したのは、まさにフェアプレーでした。セネガルと比較してイエローカードが少なかったこと。

これはJFAミュージアムの地下二階に来ていただければ分かる通り、フェアプレー賞は本当に多く受け取っています。我々がやってきたことが間違いではない。それは明らかだと思っています。

そして私達のバリュー(価値)、エンジョイ、プレイヤーズファースト、フェア、チャレンジ、リスペクト。まさにこういう気持ちを私達が継続していることは、チームに反映されなければなりません。

ドリーム、夢があるから強くなる。そのスローガンを元に日々の活動を行っております。

そして、『ジャパンズウェイ』ということを我々はずっと言ってきました。

そして、私の盟友の中にも、『ジャパンズウェイが実現する可能性がありますね、これをやっていけば世界に繋がると確信を持てた』という意見をたくさん頂きました。

ご存じない方もいらっしゃるかもしれませんが、2006年以降、小野剛が技術委員長時代にこのジャパンズウェイを提唱しました。その都度変化もさせています。

日本は1993年にJリーグができ、2002年にW杯があるなかで、世界に追いつけ追い越せ、日本には足りないものがたくさんあるんだという、そういう気持ちで私達は代表の活動に取り組んでしました。

そして、世界をリスペクトして、そこに追いつけ追い越せでだけでは世界に追いつかない。日本の良さを生かして、日本らしさを追求し、確立する必要があるという風に考えたのがジャパンズウェイです。

日本人の素晴らしさや世界の中でも秀でている部分、技術力、俊敏性、持久力、組織力、そして勤勉性、粘り強さ、フェアであること。

それは私達が思う以上に、オシムさんやザッケローニさんが仰っており、またFIFAのテクニカルレポートにも書かれています。海外からも認められているということです。

それをまず実現してくれたのがなでしこJAPANであり、2011年にワールドカップで優勝してくれました。その後女子も含めて多くの選手がトップクラブでプレーするようになったのもジャパンズウェイがあったからだと思います。

世界基準ということを、西野委員長時代から関塚委員長になるまでも常に分析し続けてきました。

世界基準がここにあるならば、例えば組織力、コレクティブな力。そして持久力、まだ足りないかもしれないけれどもここに引っかかっている技術力。そして個で戦う力やコンタクトスキル。これはハリルさんらが言っていたデュエルにも通じると思います。

そして一方、ゴールに向かう力を気持ちは足りないねと。そして駆け引き。ゲームを読むという部分では、多くの選手がヨーロッパの強豪クラブに行くこと、Jリーグの各クラブが世界と戦うことによって、身につけられつつあります。

ただ、まだ選手個々としての自立した判断が足りないんじゃないか。そしてパワーとかも足りないね、というのは分析してきました。しかし、それも今回若干上がってきた部分があるだろうと。

足りないものはもっと高めなければならないが、しかしそれ以上に日本人が世界のレベルにあるものを伸ばしていくこと。それに務めなければならない。それが日本人らしいスタイルをもって戦っていくことだと思います。

それと同じように、オールジャパンで戦うということで分析力。これは6大会連続で戦って培ったものです。コンディショニング、対応力、理解力、オールジャパンとして結束したときの力、フェアプレー、それらが優れているということは分析してきました。

逆にゴールキーパーやセンターバックの部分ではもっと頑張っていかないと世界に追いつかないのではないかと考えています。

ボールスピードについては、芝生が少し長かったということで戸惑った部分はある。その中でもパワーを持って蹴ることができるかどうか。そこもまだやらなければならない部分だと思います。

ジャパンズウェイは、あるシステムやある戦術を決めるというものではない。日本人の良さを生かして発揮する、その試合展開がジャパンズウェイです。西野監督がそれを示してくれたと思います。

これは育成年代でこそ身につけられるものであり、それを共有して取り組まなければならないというのが事実です。それを我々はやってきましたし、これからもやり続けていかなければいけないと思っています。

監督を決める際に、そして日本サッカーの方向性を決める際、『属人的』であってはならない。ある監督が来て、その大会が終わって下がり、またそこから歩み始める。それでは上がっていけない。

トルシエ監督、ジーコさん、ザッケローニさん、オシムさん、岡田さん、ハリルホジッチさん。そういう方たちを継続できたものを積み重ねて今がある。

西野さんもハリルホジッチさんの技術委員長として務める中で積み上げたものを発揮して成績を残しました。もちろんベスト8には入れませんでしたが、素晴らしい試合をしたのも事実です。

これを共有するという意味では、育成年代にベクトルを合わせていかないと、方向性がズレてしまう。

我々は世界を分析し、日本人の良さを伸ばすことにより、推進力をより高いものにしていきたい。

三位一体、そして普及を通して底上げをしっかりしていく。それが整っていなければ、代表チームだけで強くなることはない。そして育成年代をしっかりやるためには、指導者も育てていかなければならない。改めて思っております。

ジャパンズウェイの確立は属人的なシステムではありません。三位一体の強化をしっかりやっていくこと。

90年代には謙虚に学び、世界に追いつけ追い越せでやってきました。それだけではなく、日本人の誇りを胸に戦う、これは『どちらか』じゃないんだと。両方ともやっていくことがジャパンズウェイだと考えています。

そのためには、西野委員長時代にも考えていたことですが、『日本のサッカーとシステムを熟知した人が監督になるのがふさわしい』と考えてきました。

Jリーグが始まって25年、ワールドカップに6大会出ています。日本の環境で育った方に監督をしていただくのが望ましいのではないかというのは、W杯を分析した上で、関塚委員長の下でも同じ方向性が出されました。

その中で我々は新しい監督を決めました。このようなロッカールームのこと、ピッチの中でも外でもやってきたジャパンズウェイだと確信しています。そういったものを我々は今後も継続し、推進していきたいと思っています」

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