「このままでは…」 快投の西武菊池、2段モーション“封印”を決断したワケ

9回1失点と好投した西武・菊池雄星【写真:荒川祐史】

4連勝を呼び込む127球の力投「普段はシーズン中の投球映像など見返すことはない」が…

 西武は26日、1-1で迎えた延長10回に代打・森の適時打が飛び出し、オリックスに連夜のサヨナラ勝利。チームの勝利のため、先を見据えて投球フォームを改良したエースの力投が4連勝を呼び込んだ。

「状態を上げようとこの1週間やってきた。それを明日、表現できれば」と登板前日に語っていたエースの菊池雄星投手が、勝敗はつかなかったものの9回7安打1失点と快投。試行錯誤の中、この1週間で出した答えが投球フォームの変更だった。

 前回登板(20日・楽天戦)で、思うような投球ができず6回6失点で今季2敗目を喫した菊池。試合後、女房役である炭谷や土肥投手コーチ、そして辻監督などに客観的な意見を求めた。そこで「2段モーションにしたことで(今季は)下半身がうまく使えていないのでは」と指摘を受けた。これは菊池自身も感じていたことだった。

「普段はシーズン中の投球映像など見返すことはない」という菊池だったが、今回は映像で自らのフォームを確認。昨年と今年では投球のタイミングが違うことを改めて認識した。そこで「練習だけでも、2段をつけずに投げてみたら」という炭谷のアドバイスもあり、「完投や完封が求められる中で、このままだとそれを果たすことは難しい」(菊池)と、このタイミングでの投球フォーム変更に踏み切った。

 昨年は2段モーション禁止との指摘を受け、この時期に投球フォームの変更を余儀なくされた菊池だが、今回はその経験が生きたのか、抵抗を感じることはなかった。土肥コーチのアドバイスを受けながら、2段モーションではない投球フォームで中5日のマウンドへ上がった。

「フォームに慣れるまでは自分との戦いだった」

「今日のフォームに慣れるまでは自分との戦いだった」と語った菊池は、序盤の4回まで毎回安打を許し、しかも2回以降は毎回得点圏にランナーを置く苦しい投球となった。ボールを受けたキャッチャー炭谷も「序盤は落ち着かない感じだった」と、ミット越しに菊池の苦闘を感じ取っていた。しかし、「ばらついてはいたけど、球自体には力があった」と炭谷が振り返ったように、ピンチを招きながらも力のこもった投球で要所を抑え、試合をオリックス・アルバースとの投手戦へと持ちこんだ。

 バッテリーが「後半は良くなった」と口を揃えた5回以降の投球では「今季一番できていなかったインコースへのストレート。それが、何球かいいボールがいくようになって、自分でもなんでそこに投げることができているのか分かってきた」。この日の収穫を菊池は少し嬉しそうに語った。

 8回終了時点で、投球数が117球に到達。交代も考えられる中、9回は「回を追うごとに良くなっていたので、どうせならもう1イニング投げて(身体に)定着させたい」と自らの意思で続投を決意。9回127球1失点の内容で延長10回サヨナラ勝利を呼び込み、チーム4連勝に大きく貢献する投球を見せた。

 結果的に自らの勝利とはならなかったが「(エースという)自分の立場ではそういうことへのこだわりは持っていない。チームが勝てればいい。終わりよければすべて良し」と額を流れる汗をぬぐった菊池。その表情は明るかった。

 炭谷も今回の投球に「だいぶ(球を)受けている感じも変わってきたから、この感じで続けていければ」と手応えを感じ「(投球の)タイミングが合えば球速も上がってくるし、投球も安定してくるので続けよう」と菊池に話しかけたという。

「最後の方はいい感じで投げられたので、また来週楽しみです」と自身の投球への手応えに時折、笑顔を交えて語っていた菊池だったが、最後は「来週からは(登板は)金曜日に戻り、またすごくいいピッチャーが出てくると思うので、今日のように粘り強く投げられればと思います」と、視線を今後も続く厳しい戦いへと向けていた。(岩国誠 / Makoto Iwakuni)

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