店舗の施術 届けたい 訪問美容に取り組む 宮崎百里さん(35) 父の介護きっかけ 高齢者ら笑顔に

 病院や介護施設などに出向き、髪の毛を整える訪問理美容。長崎市に住むフリーの美容師、宮崎百里(ゆり)さん(35)は今年、「美容室でできることをお家(うち)で」をモットーに訪問美容を始めた。市内や西彼時津、長与両町などで、シャンプー台を使ったシャンプーやカットの他、カラーやパーマも施術している。
 民家の前に水色の軽自動車が止まり、運転席から降りた宮崎さんがシャンプー台などを次々と1人で運び入れていく。訪問美容はこうして始まる。
 宮崎さんが美容の道を志したのは、母親が亡くなった17歳、高校2年の時。当時大学生だった姉と「死に化粧」を施した。「ちょうど進路を考える時期で、たくさんの人に『お母さんきれいね』と言われ、美を追究するのもいいなと思った」と振り返る。訪問美容を始めようと考えたのは、父親(78)の介護がきっかけ。病院や介護施設などに足を運ぶことが多くなり、「父は私が髪を切ってあげられるが、他の人はどうしているんだろうと思ったから」と話す。
 施術中はアロマをたき、美容室の雰囲気とお客さんがリラックスできる空間をつくる。簡単なメークを施すと「年配のお客さまが『そこまでしてくれるの』と少し恥ずかしそうに、でもうれしそうに言ってくださった」と笑う。「『助かった』と言ってもらえる。かなり必要とされていると思う」とやりがいを感じている。
 訪問美容を始めて約4カ月。宮崎さんは今、新たな目標を掲げている。「特に在宅医療児を持つお母さん方の気分を明るくしたい」
 在宅医療を必要とする子の母親だけでなく、産後間もなかったり、子どもが幼かったりする母親は「美容室に行きたくても、後回しになってしまうようだ」と宮崎さん。訪問美容を探そうとすると、年配の人に向けたサービス内容が多い。「美容室に行った後はうれしくなるはず。お母さん方を少しでも癒やすことができたら」
 宮崎さんは8月5日、長崎市万屋町の布なぷきん・おむつ専門店「りぼん」でイベント「美容デイ作っちゃお」を開催する。「きれいになることで少しでも気分がすっきりして、明るく過ごしてもらえるよう、今後もサービスを届けていきたい」
 料金はカットのみの場合4320円。問い合わせ・予約は電話(080・8383・7668)で受けている。初回のみ、希望日時の2週間前までに連絡が必要。

客と和やかに会話しながらシャンプーする美容師の宮崎さん=長崎市内

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