2018年夏季休暇におすすめの本10選

世界で記録的な猛暑が観測されている今夏。少し時間に余裕のある休みの日に、いつもより広く大きな視点で「地球」や「世界の動き」について考える10冊を紹介する。(サステナブル・ブランド ジャパン=橘 亜咲)

**1.人類と気候の10万年史――過去に何が起きたか、これから何が起こるのか
中川 毅 著 講談社ブルーバックス**

地球史、人類史から気候変動を考える一冊。人類は、その誕生から20万年の間、気候が激変する時代を生き延びてきた。地球の温暖期は、10万年ほどの時間をおいて繰り返されている。著者は現代について「地球の歴史の中では比較的めずらしい、おだやかで暮らしやすい時代」と話す。過去の精密な記録から気候変動のメカニズムに迫り、壮大な時間軸で「気候」から地球の今と未来を考える。

**2.気候で読み解く日本の歴史 異常気象との攻防1400年
田家 康 著 日本経済新聞出版社**

奈良時代から江戸時代にかけて起きた寒冷化や干ばつ、それに伴い発生した飢饉や疫病、戦争に、時の為政者がどのような政策をとり、科学技術を進歩させてきたのかを追った本書。地球史も共に紹介され、世界の気候変化と日本の歴史を比較できる。奈良時代、干ばつ時の飢饉対策の三本柱は、雨乞いの祈祷と税の軽減、被災者への救済米だった。古代中国で為政者に徳がないと天災が起きると言われていたこともあり、祈祷の効果がないと、天皇は自身の不徳ではないかと考え、徳を積むために罪人を釈放する恩赦を行っていたと言う。一方、飢饉対策として、水田を秋に陸田にして雑穀を栽培することが推奨されるようになり、水田二毛作が誕生した。これに伴い、鉄製農具の普及や家畜利用による生産性向上、肥料の多様化、灌漑設備の発展が進んできた。時に政権を揺るがす要因にもなった異常気象を振り返る。

**3.20億人の未来銀行 ニッポンの起業家、電気のないアフリカの村で「電子マネー経済圏」を作る
合田 真 日本植物燃料代表 著 日経BP社**

世界に約20億人いる「金融難民」に「新しい仕組みの銀行」を提供するため奮闘する日本人起業家の物語。「せめて努力している人たちがもう少し報われる世の中を作りたい」――。京都大学を中退した著者は、日本から1万2000キロ離れたモザンビークでバイオディーゼル燃料を作り、無電化地域に電気を届ける事業を行う日本植物燃料を創設した。金利で稼ぐ金融モデルは資源制約期の「現実」に合わない。既存の金融システムが生み出す不条理を解決するために構想した「もう一つのFinTech」とは。巻末には、著者が影響を受けた書籍一覧が付いている。

**4.WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE. 〜現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ〜 
佐渡島 庸平 著  NewsPicks Book 幻冬社**

太古から存在した「コミュニティ」。モノが売れないと言われる時代、その「コミュニティ」を作れるかでモノが売れるかが決まる。では、コミュニティはどう作るのかーー。週刊モーニングで『バガボンド』や『ドラゴン桜』『宇宙兄弟』など多くのヒット作を編集し、インターネット時代に合わせた作家・作品・読者のカタチをつくるためクリエイターエージェンシー「コルク」を創業した著者が語る。

**5.2030年 未来への選択 
西川 潤 著 日本経済新聞出版社**

企業は今なぜ持続可能なビジネスに取り組むことを求められ、その選択は歴史的、世界的、そして未来においてどのような意味を持つのか。より広い視点、長い時間軸で、SDGsやCSR、サステナビリティ経営の立ち位置を捉えられる一冊。著者は2030年という近未来に影響を与える世界の「人口」「食料」「エネルギー」「資源」「環境」の動向から未来を予測すると、「ナショナリズムが強まり、国家同士の対立が激化」「グローバリゼーションがさらに加速」「地域主義が強まり、新たなガバナンスとして浮上」「超大国の元に合従連衡の再編が起き、いくつかの超大国グループが対峙」することが考えられると言う。それを回避するために、人類は、SDGsなどを通して、21世紀以降の人口、食料、エネルギー等の資源、環境の状況を冷静に見つめ、共同管理によって持続可能な発展を可能にしようとしている。「未来は占うものではなく、私たちがどのように関わり、何をどう選択するかによって決まる」――。

**6.未来の年表 人口減少日本でこれから起きること
河井 雅司 著 講談社現代新書**

2024年には全国民の3人に1人が65歳以上になり、2033年には3戸に1戸が空き家に、2040年には自治体の半数が消滅する。本書では、これからの日本でどのように人口減少が進んでいくのかを2017年から2115年までの人口減少を予想する年表付きで紹介している。著者は加速する人口減少を「静かなる有事」と呼び、国として「戦略的な縮小」を実践し、「効率的な国」に作り替えていくことを提案する。決して明るい内容ではないが、自分自身で未来を考えるきっかけになる。2018年5月には続編『未来の年表2』も発売された。

**7.幸せな人は「お金」と「働く」を知っている
新井 和宏 鎌倉投信株式会社 取締役・資産運用部長 著 イースト・プレス**

「いい会社」に共通して言えることは、「これからの社会に必要とされる会社」であり「人間としての成長ができる環境を提供してくれる会社」であることーー。鎌倉投資の新井取締役が、若い人たち、特にこれから社会に出る人とその親に向けて著した一冊。「これからの時代」「働くこと」「お金」「幸せ」の本質について、自身のさまざまな体験を交えて語りかける。「AIやロボットはこれまでの『優秀』の定義を覆し、記憶力の高さは優位性ではなくなる。真に『優秀な人』は優しさに秀でる人だ」と同取締役は話す。2017年3月に上梓した『持続可能な資本主義』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)もおすすめ。

**8.Airbnb Story 大胆なアイデアを生み、困難を乗り越え、超人気サービスをつくる方法
リー・ギャラガー 著 日経BP社**

宿泊業界の根底を覆した民泊仲介最大手「エアビーアンドビー」。世界を席巻する宿泊サービス「エアビーアンドビー」はどう生まれ、なぜこれほど支持を得ることができたのか。画一的なブランドに不満を持ち、デジタル上でつながる関係に慣れているミレニアル世代が「エアビーアンドビー」を選ぶ本当の理由はなにか。時代を象徴する企業から、時代が求めるものの本質を学ぶ。

**9.一汁一菜でよいという提案
土井 善晴 著 グラフィック社**

忙しない日々の中でも、健康に働き、生き生きと暮らすには「自分自身の心の置き場、心地よい場所に帰ってくる生活のリズムをつくることが大切」と著者は言う。そして、その柱となるが日々の「食事」だ。食べることは生きること。手の込んだものでなくても、少々失敗をしても、「一汁一菜」を準備して食べることが、自分の身体や暮らしを自分でコントロールすることにつながる。

**10.エル・ジャポン(ELLE JAPON)2018年8月号 
ハースト婦人画報社**

「私たちのサステナブル宣言」の文字が表紙に踊る8月号。世界を代表するファッション誌が巻頭特集で「サステナビリティ」を取り上げたことは時代の流れを象徴している。SDGsや気候変動、ファッション業界のサステナビリティへの取り組み、海外セレブの環境保全活動などが30ページにわたって紹介。エル日本版編集長の酒井氏は、「ファッション産業は世界で2番目に地球環境に悪影響を及ぼしている。このまま臭いものに蓋をするわけにはいかない。一番怖いのは無意識と無自覚でいること。身近なところからアクションを起こそう」と呼びかけている。日本では今年に入り、マガジンハウスが発行するファッション誌『GINZA』5月号でもサステナビリティが取り上げられるなど少しずつだが日本のファッション業界でも「サステナビリティ」に注目が集まっている。

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