ウィゴーが3度目の株主交代 投資ファンド傘下で再スタート

 カジュアルウェアショップ「WEGO」を全国で展開する(株)ウィゴー(TSR企業コード:571565204、渋谷区、高橋英朗社長)は7月20日、会社分割手続きで(株)WGホールディングス(TSR企業コード:028690958、千代田区、原田健一社長、以下WG社)に全事業を分割承継することを公告した。
 同時に卸販売事業や海外仕入部門、タレント・モデルマネジメントなどグループ3社の事業も、WG社とWG社の関係会社に吸収分割し承継する。昨年以降、3度目となる経営体制の交代に関係先の注目が集まっている。

 ウィゴーの関係者によると、債権者などから特段の異議がなければ8月31日をもって事業承継を完了させる予定。商標やブランド、店舗を含むすべての事業資産と負債、全従業員を承継する。
 約20行ある取引金融機関にはすでに説明済みで、了承を得ているという。これまでの経営方針に大きな変更はなく、取引先との関係や担当窓口も継続する予定だ。
 8月31日付でWG社は、(株)ウィゴーに商号変更する。WG社の100%子会社で受け皿会社になる(株)WEL(TSR企業コード:028691415)は(株)ウェルメットに、(株)LEX(TSR企業コード:028617894)は(株)レキシントンに、それぞれ旧会社と同一商号に変更する。旧会社は社名変更した後に解散し、清算業務に移行する。
 ただ、事業再生を目的としたいわゆる第二会社方式による事業移管ではない。債権債務の一切を新会社が引き継ぐため、旧会社を特別清算する予定はないという。

ウィゴーグループ 分割承継の概要

ウィゴーグループ 分割承継の概要

投資ファンドJ-STAR傘下へ

 WG社など、事業を承継する側の3社は投資ファンドのJ-STAR(株)(TSR企業コード:296639117、千代田区、原緑郎社長)から出資を受け、今後はJ-STARを背景とした新体制に移行する。
 J-STARは2006年に設立。投資ファンドを通じて事業承継や再生、MBO、成長支援などのプライベートエクイティ事業を手掛け、これまでに約30社の投資実績がある。メーカーや卸、小売と対象とする業種は幅広く、過去にはアパレル企業の事業再生を手がけた実績もある。
 新ウィゴーの経営陣には、代表取締役として園田恭輔氏(現ウィゴー取締役WEGO事業部事業部長)が就任。園田氏を含めて現ウィゴー取締役3名が役員に就任し、J-STARからも原田健一氏(現J-STAR取締役パートナー)ら3人が役員に就任する。
 なお、ウィゴーの創業者でグループの顔でもあった中澤征史氏(現ウィゴー取締役会長)はファウンダー特別顧問の肩書きで、今後も事業の拡大と成長に尽力していくとしている。

「WEGO」原宿竹下通り店(2017年12月撮影)

「WEGO」原宿竹下通り店(2017年12月撮影)

昨年には2度の株主変更

 ウィゴーを巡っては2017年8月、創業社長の中澤氏ら役員が退任し、(株)オーチャードコーポレーション(TSR企業コード:300089520、東京都中央区、伊藤忠寛社長、以下オーチャード)が主要株主となった。
 業容拡大で借入金も膨らみ、中澤氏個人が負う連帯保証債務などが負担となったほか、オーナー企業から脱却し、安定成長するためには外部からの経営者招聘が最善と判断した。
 ところが、オーチャードとウィゴーとの間で事業の方向性に齟齬が生じたうえ、金融機関などのステークホルダーがオーチャード体制と中澤氏が経営から外れることに難色を示した。このため2017年11月、オーチャードは所有していた株式を(株)アラタマコーポレーション(TSR企業コード:402456343、名古屋市瑞穂区、安井信之社長ほか代表1名、以下アラタマ)に売却。わずか3ヶ月で大株主が異動した。
 アラタマはミシン大手のブラザー工業(株)(TSR企業コード:400008408、名古屋市)の創業家一族の資産管理会社(ブラザー工業との資本関係はない)で、アラタマが組成する投資事業組合がウィゴー株式の大半を握る筆頭株主となった。
 中澤氏も取締役会長に復帰し、アラタマが招聘した米国公認会計士の資格を持つ高橋社長と中澤会長との双頭体制でリスタートしていた。

 アラタマ主導の経営体制に代わって8ヶ月、新体制での経営が軌道に乗ったかに見えた矢先の今回の動きで、取引先は驚きを隠せない。
 ウィゴーの関係者は今回の事業承継の経緯について、「株主同士の交渉事なので詳細は分からない」としながらも、「アラタマは資産管理会社で人的リソースも限られている。激動するアパレル業界で株主としての責任を果たせるのか。金融機関の理解を得られるかも未知数で、ノウハウも実績もある所に任せたいとの意向だった」と語る。
 一方、ウィゴーの2018年2月期決算は、売上高は前年度並みだったが、在庫の評価損や安値販売分のロスなどを特損計上したことで、当期損失11億9,700万円の最終赤字を計上した。
 ウィゴーは「本業部分では黒字を維持しており、(赤字は)一過性のもの。新体制1期目は前期比10%増と黒字を見込んでいる。体制変更で出店計画は一旦白紙となるが、引き続きスクラップ&ビルドを進め、これまでの成長戦略は変わらない」とコメントしている。
 若年層を中心に圧倒的な支持を持つ「WEGO」。紆余曲折を重ねる経営体制の変遷は、急成長企業であるが故に発生した歪(ひずみ)ともみることもできる。
 3度目の株主交代で再び軌道を成長路線へと乗せることができるのか。新経営陣の手腕と舵取りに注目が集まっている。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年7月30日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)

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