トロロッソ・ホンダF1密着:雨を味方につけ、マクラーレン・ホンダ時代を超える予選結果を獲得

 F1ハンガリーGPの予選で、トロロッソ・ホンダが2台そろってQ3に進出した。トロロッソ・ホンダとしては、今シーズン初めてのことだ。マクラーレン・ホンダ時代を振り返っても、ホンダのパワーユニットを搭載した2台がそろってQ3に駒を進めたのは、2017年マレーシアGPのストフェル・バンドーン7番手、フェルナンド・アロンソ10番手以来のことだった。 

 さらに、Q3の予選でピエール・ガスリーはレッドブルのマックス・フェルスタッペンを上回り、第4戦バーレーンGPに並ぶ6番手を獲得。初めてQ3に進出したチームメイトのブレンドン・ハートレーも、ハースの2台をおさえて、予選自己ベストとなる8番手に入った。

 この結果はホンダにとって大きな意味を持つ。それは予選6番手&8番手という成績は、じつはマクラーレン・ホンダの3年間で挙げた2台での予選最高位を上回ったからだ。マクラーレン・ホンダ時代の2台での予選最高位は、2016年のハンガリーGPのフェルナンド・アロンソ7番手、ジェンソン・バトン8番手だった。

2018年F1第12戦ハンガリーGP FP3:トロロッソ・ホンダ

 それを可能にしたのは、雨にうまく対応したからにほかならない。ただし、チームとしては、ドライコンディションで行われたフリー走行3回目で8番手と10番手に入る速さを見せており、「雨に助けられた」という表現は適切ではない。

 チーフレースエンジニアのジョナサン・エドルズはこう振り返る。

「ドライコンディションで行われたフリー走行3回目の走りにとても満足していたので、少なくとも1台はQ3に行けるだろうと考えていた。だから、予選直前になって雨が降り出したときは、とてもがっかりした」

■ハンガリーGP予選Q1ではハートレーにトラブルも

 実際、チームは雨の予選に序盤少し混乱していた。Q1の序盤はインターミディエイト(雨用と晴れ用の中間)タイヤでの予選となったが、徐々に路面が乾きだし、後半はドライタイヤを履いてのアタック合戦となった。ハートレーは路面状況をレースエンジニアと細かく無線で話し合い、早めにドライタイヤに交換した。

2018年F1第12戦ハンガリーGP 予選:ブレンドン・ハートレー

 しかし、ピットインの際、「メカニックがフロントウイングの角度を調整し忘れたため」(ハートレー)、次の周に再びピットインしなければならなかった。これでタイヤの温度が下がったハートレーはなかなか思うようなアタックができないまま、Q1突破圏外に落ちてしまう。

「あれが最初で最後のチャンスだった」というラストアタックで、ハートレーは1分18秒429をマーク。「今年、一番の予選だった」と喜んでいた。

 一方、ガスリーも「クルマをコース上にとどめておくのがとても難しいコンディションだった」と語るように、雨によって予選6番手を獲得できたというわけではない。そして、こう振り返る。「チームが素晴らしいタイヤ戦略を立ててくれた」と。

 例えば、Q2はセッションの途中から雨が強くなったが、「雨脚が強くなる前にタイムを出せたことが良かった」と、ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターが指摘するように、ドライバーをアタックに出すタイミングがすばり当たった。

 この日のトロロッソ・ホンダの6番手と8番手は、雨によって助けられたのではなく、雨を味方につけて勝ち取ったチーム最高の結果だった。

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