<八戸三社大祭>「私はここに残る」 家族と離れ、祭りに情熱

本番へ向け、真剣な表情で作業に打ち込む柳川彩乃さん=26日、八戸市

 開幕まであと2日と迫った八戸三社大祭。青森県八戸市内の各山車小屋では山車制作の追い込みが続く中、内丸親睦会の会社員柳川彩乃さん(20)も若き女性制作者の一人として作業に打ち込んでいる。昨年、同居していた家族が首都圏に移住することになり、当初はついて行くつもりだったが、大好きな三社大祭と離れることができず、1人残って市内の企業に再就職する道を選んだ。柳川さんは「祭りがなければ夏が来たっていう感じがしない。今年も楽しい三社大祭にしたい」と完全燃焼を誓う。

 神奈川県出身。幼い頃に八戸に引っ越してきた。三社大祭に初めて参加したのは小学5年の時。友人に誘われたのがきっかけだった。それまでは見ているだけだったが、参加することで初めて祭りの醍醐味(だいごみ)や楽しさを知った。

 中学生からは笛を担当。祭りに参加する友人は減っていたが、祭りへの情熱は年々、高まった。高校生になってからは山車作りにも加わり、三社大祭の魅力をさらに実感した。

 しかし、高校卒業後、社会人となり、祭りに没頭できる環境がなくなってしまった。仕事が夜遅くまで続く日も多く、その傍らで山車作りにも参加したが疲れがたまる一方だった。何とか休暇を取って祭りに出ることはできたが、社会人として参加する難しさを実感した。

 そんな中、家族で神奈川県に移住する話が浮上。長らく育った地元を離れる寂しさはあったが、家族との時間を優先し、一緒に移住する気持ちに傾いた。

 しかし、会社を辞め、地元を離れることが決まってから、祭りへの思いは日に日に高まり、今年1月に山車組関係者に「離れたくない」と本心を打ち明けた。

 自分の気持ちを知っていてほしい―。その一心だったが、"小さな勇気"は思わぬ吉報をもたらした。

 意を酌んだ山車組の先輩たちが、地元に残れるよう再就職をあっせんしてくれたのだ。もちろん断る理由はなく、家族にも報告し、晴れて地元に残ることが決まった。

 同市内丸2丁目の内丸親睦会の山車小屋では26日、多くの男性に混じって作業に汗を流す柳川さんの姿があった。今年は、40年ぶりに「竹取物語」を題材に選び、山車の外枠も新調。色彩鮮やかな豪華さを表現するため、柳川さんも丁寧に装飾品を作り出していた。

 山車組責任者の下村豊さん(55)は「お囃子(はやし)ではリーダー的存在で、山車作りでも欠かすことができない。残ってくれることになってありがたい」と温かいまなざしで見守る。

 近くでその言葉を聞き、笑みをこぼす柳川さん。「再就職の話は最初、冗談かと思ったが、すぐに決断した。自分の出した答えを信じて、これからも三社大祭に関わっていきたい」。今年も"熱い夏"が始まる。

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