【CH鋼線メーカー、現状と展望3】〈宮崎精鋼〉合理化、付加価値化を追求 北米市場開拓にも注力

 宮崎精鋼は中部地区大手磨棒鋼・CH鋼線メーカーで、今年創業80年の節目を迎える。月数十トン規模での引抜磨棒鋼の生産がルーツだが、1960年にはCH鋼線の量産をスタート。最終製品に近い形での納入要請に対するファインスラグ(冷間圧造用中間素形材)、部品の軽量化、中空化ニーズに対応する引抜鋼管をそれぞれ82年、87年から生産し、向け先の9割以上を占める自動車市場の変化をタイムリーに捉え続けてきた。生産数量も着実な伸びを見せ、CH鋼線単体でも12万6725トン(2017年度)の規模を誇る。

 自動車、部品の内需縮減に伴い、国内特殊鋼棒線市場は今後大きな拡大が期待し難い。車体の構造変化の影響も懸念されるが、宮崎社長は「EV化など自動車市場の変化のテンポは、現段階でそれほど速くないと捉えている。現在手掛ける製品ラインアップの生産実力に磨きをかけ続けながら、慌てずに対応し続ければ成長を続けられる」と冷静に先を見据える。

 国内は主に磨棒鋼を手掛ける本社工場、CH鋼線、ファインスラグ生産の拠点・知多工場、研削磨棒・鋼管とそれらの切断品を量産する十四山工場の3工場体制。近年全工場の大規模な合理化投資を相次いで実施し、工場見学に訪れた自動車メーカーの担当者も舌を巻くほどの「筋肉質な」製造現場を作り上げた。

 それでもなお、年間7億~8億円の投資を続けている。「合理化は収益性向上だけでなく、製品の安定供給にもつながる。満足度を高めるとともに、ファインスラグをはじめとする高精度製品を武器に付加価値を高め、逆風下であっても国内での数量増を狙いたい」と、宮崎社長は足場固めを進める考えを示す。製品別では、ファインスラグの生産能力引き上げに向けた投資を積極化する計画だ。

 一方、成長を続ける海外市場ではかねてから新日鉄住金のタイ、中国合弁に出資し、技術指導などを行ってきたが、北中米市場の拡大に合わせて2014年にはメキシコ現地法人「ミヤザキセイコウ・デ・メヒコ」を設立した。独資での進出は初となる。17年から一部製品が量産体制に移行し、海外での磨棒鋼、CH鋼線生産が本格始動した。

 北米市場への挑戦は、「世界トップクラスの特殊鋼棒線二次加工メーカー」を目指す同社の試金石だが、知名度不足など越えるべき壁も少なくない。しかし今秋にはピーリングマシンの設置を予定、加工領域を広げて対応力を高めるとともに、商社との協業を通じて販路を広げる計画だ。

 今年度はデータの電子化も視野に、本社近くにある厚生設備のリニューアルも計画するなど、合理化とともにBCP対策も強化する。基盤強化を図りながら、80年間守り続けた「ニーズを先読みし、迅速に事業展開する」方針で段階的な業容拡大を狙う。(このシリーズは不定期で掲載します)(佐野 雄紀)

 会社データ

 ▽本社所在地=名古屋市中川区丸米町一丁目1番地

 ▽代表者=宮崎薫氏

 ▽資本金=1億4700万円

 ▽売上高=263億円(17年5月期)

 ▽拠点=本社工場、知多工場、十四山工場、メキシコ(ミヤザキセイコウ・デ・メヒコ)

 ▽年間生産量=18万4千トン

 ▽従業員=267人

 ▽主要品種=冷間圧造用鋼線、磨棒鋼、引抜鋼管、ファインスラグ

© 株式会社鉄鋼新聞社