【MLB】PO進出チャンスのマリナーズ GMがイチローに望んだ重要な役割、その成果

マリナーズ・イチロー【写真:Getty Images】

なぜ今年のマリナーズは強いのか、鍵は“グラウンド外”にあり!?

 マリナーズが2001年以来のプレーオフ(PO)進出に向けて好位置につけている。これまでも積極的な戦力補強を敢行した年がありながら、ことごとく期待を裏切ってきたが、今季の強さは本物。主砲のロビンソン・カノ内野手が薬物規定違反で出場停止処分を受けた時にはそのまま失速すると見られていたにもかかわらず、その後はむしろ勢いを増し、昨季世界一のアストロズとも激しく競り合ってきた。

 いったいなぜ、今年のマリナーズは強いのか。米誌「スポーツ・イラストレイテッド」は“グラウンド外”に注目。1週間の密着取材を行った特集を組む中で、今季途中に会長付き特別補佐に就任したイチロー外野手の影響の大きさについても伝えている。

 同誌は「上手くいくだろうか? プロスポーツにおける最長のプレーオフ未進出期間を終わらせようと試みているマリナーズの1週間に密着」とのタイトルで記事を掲載。「1週間密着することで、マリナーズにはスポーツにおける最長のプレーオフ未進出期間を終わらせる計画があることが分かった」と言及している。

 記事ではまず、ジェリー・ディポトGMに注目。同GMは、マリナーズでは大都市に本拠地を置く球団が誇る資金には絶対に対抗できないと考え、現在はどのチームも徹底的に行なっているデータ分析でも差別化は難しいと思っていたという。そして、監督経験のなかったスコット・サービスを招聘したことなどを紹介。「そして彼らは世界を変えることはできなくても、少なくともプロスポーツにおける最長のプレーオフ未進出期間を終わらせようと出発した」としている。

 マリナーズに1週間密着した同誌の記者が綴っているのは、グラウンド外での「戦略」。これが成功に大きな役割を果たしているというのだ。多くの分析スタッフ、メンタルコーチ、睡眠の専門家など、従来とは異なるサポートスタッフを雇用しているのが特徴で、その効果があった例として、元西武ルブランの名前を挙げている。

 西武で目立った活躍ができなかった左腕は、メジャー復帰後にパイレーツで敗戦処理などをこなす“超便利屋”として結果を残した。ただ、今年3月に加入したマリナーズでは先発ローテーションの一角に食い込み、21試合登板で6勝1敗、防御率3.51と安定感抜群の仕事ぶりを見せている。鳴かず飛ばずだった男はなぜ33歳にしてブレークしたのか。

イチローがディポトGMから期待されていたこと

 記事によると、ルブランの球威が落ちているというデータをマリナーズの投手コーチが手に入れ、生体力学の専門家が「ブルペンで彼のストライドを研究した」という。その結果として、ストライドが理想よりも短いとルブラン自身が知ったことを紹介。ビデオで比較すると「プレートを踏み込む時に後ろの脚を使っていないとすぐに分かった」というのだ。

「彼はそれに取り組み、マリナーズのメンタルコーチ(デリン・マクマインズ)に定期的に会い、コーチ陣のアドバイスに従い、もっとカットボールを投げ、もっと左打者の内角に投げるようにした」

 これは見事に結果につながり、マリナーズの戦力もアップした。そして、特集ではさらに「ディポトが雇ったのはコミュニケーションの専門家だけではない。マルティネスやイチローのようなマリナーズのレジェンドもそうである」とも指摘。イチローが果たしている役割にもついても詳しく伝えている。

「イチローは今季初めにマリナーズに戻ってきて短期間プレーした後、特別補佐としてチームに残っている。ディポトがイチローに送った指示はレズリー・マニング(専門能力開発コーディネーター)に向けられたものと同じである。自分が一番得意なことをすること。それが打撃練習を続けることでも、打者を指導することでも、たくさんのストレッチとワークアウトのルーティーンを続けることでもである。ディポトはイチローがマリナーズの選手たちに彼の試合に向けての準備を見せることを望んだ」

 イチローは最高の“お手本“として、チームに大きな影響を与えているというのだ。まさに同GMが期待した通りの結果になっている。記事によると、イチロー自身は、メジャータイ記録のシーズン116勝を挙げた2001年よりもチームの雰囲気がいいと話しているという。

 このチャンスを逃すわけにはいかない。グラウンド外からチームを変えたマリナーズが、久々に10月まで戦いを続けようとしている。(Full-Count編集部)

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