JFE条鋼水島、製造現場の技能伝承加速 教育用設備導入で作業を可視化

 JFE条鋼水島製造所(所長・稲富淳氏)は独自の取り組みで、中堅・若手への技能伝承の巡航速度を加速している。昨年12月に事務所棟内に立ち上げた研修設備「人・技の部屋」に、教育用に制作した重要設備のスケールモデルを設置した。また、作業の可視化で手順・コツを覚えやすくするアイマークカメラも導入した。

 新たな研修設備内に設置したのは、実物と寸分たがわない加熱炉の縮小スケールモデルだ。実際の設備と同様に動かすことができる精緻な作りで、どのバルブを回せばどの配管に何が流れるかなどが可視化され、大きな設備の全体像もつかめる。技能伝承以外に外部からの訪問者に対し、現場に行かなくても設備の概要が分かり易く説明可能となる利点もある。壁面部はJFE鋼板製の「ビューボード」を採用し、プロジェクターのスクリーンとしたり、直接文字や絵を書き込むホワイトボードとして使っている。また、各種工具の他、機器のカットサンプルも置いており、いつでも使い方、内部構造の教育ができるようにしている。

 アイマークカメラとは、人間がどこを見ているかを可視化するための視線計測用装置だ。例えば熟練者がカメラを身に着けた状態で、検査工程の作業を撮影すると、製品の見るべき部分やポイント、手順が可視化される。編集した動画には、各作業の説明書きを加える。この教育資料を基に若手・中堅が熟練者の視線・手順を真似すれば、技能伝承がスムーズにできる。「若手・中堅の技能を熟練レベルに引き上げるには、料理人が魚をさばくことと同様にコツの理解が肝要だ」(稲富所長)として、検査工程の他、圧延機のロールやガイド、連鋳機のモールドなどの重要なセッティング技術や安全作業の伝承に活用していく。今後は全社的な横展開もしていく考え。

© 株式会社鉄鋼新聞社