避難促す緊急メール 情報、直接住民へ 西日本豪雨教訓に

 西日本豪雨を受け、県は住民向けの避難対策を強化する。携帯各社の緊急速報メールで一部河川の氾濫危険情報を9月から配信し、自主的な避難を促すほか、同様の仕組みを土砂災害警戒情報に取り入れることも検討。避難勧告などの発令を担う市町村の役割に配慮しつつ、緊急性の高い情報を直接伝え、逃げ遅れを防ぐ狙いだ。 

 死者が220人以上となった西日本豪雨では、河川の氾濫や山間部での土石流などが各地で多発。激しい雨が夜に集中した地域も多く、気象庁が出した大雨特別警報や市町村による避難勧告などが、住民の危険回避に結び付かなかったと指摘されている。

 被災地のこうした教訓を共有しようと、県は30日、市町村などと合同の協議会を開催。市町村の避難対応を支える従来の取り組みにとどまらず、住民の主体的な行動に結び付く直接的な情報発信を充実させる方針を説明した。

 緊急速報メールで氾濫の危険情報や発生情報を提供するのは、県が管理する相模川中流と酒匂川。これまでは地元市町村や報道機関を通じて知らせていたが、流域の住民らに直接届くようにする。具体的な配信地域については今後、市町村と調整する。

 横浜地方気象台と共同で発表する土砂災害警戒情報についても、同様の仕組みを導入する方向だ。降り続く雨で崖崩れや土石流などの恐れが高まった際に出される警戒情報は大雨警報より危険な状況を示すが、情報の精度に課題があるため被害の見込まれる地域の絞り込みが難しく、市町村によっては、国が求める避難勧告の発令などに活用していない現状がある。

 しかし、国土交通省によると、西日本豪雨では、犠牲者の出た土砂災害現場の大半で、発生前に警戒情報が発表されていたという。

 県は市町村向けの対策も拡充し、水位が急上昇しやすい中小河川で氾濫の危険性が高まった場合に、地元市町村の幹部へ即座に知らせる「ホットライン」のメール配信を9月に開始。記録的な雨量やダム放流に関する情報提供や注意喚起も電話で徹底し、市町村が勧告などを発令するタイミングを逃さないようにする。

 県は「何よりも地域や住民の主体的な行動が大切。発表した情報を生かして少しでも早く避難行動を起こしてもらえるよう、市町村と取り組んでいきたい」としている。

西日本豪雨の課題を共有し、避難対策の強化を確認した協議会=県庁

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