「占勝閣」管理責任者 吉田真琴さん(42) 裏で細やかな気配り 「大事に守る責任感じる」

 「明治日本の産業革命遺産」(本県など8県の23施設)に含まれる「占勝閣(せんしょうかく)」は、三菱重工長崎造船所(長崎市飽の浦町)の迎賓館。1904年建築の瀟洒(しょうしゃ)な洋館だ。「歴史ある建物を大事に守っていく責任を感じます」
 95年入社。現在総務チームに勤務し、5年前から占勝閣の維持管理を担当する。長崎造船所で長年働いた父でさえ、占勝閣内に入れたのは定年退職時に見学した一度だけ。「担当者でないと入れない建物。光栄に思っています」
 雨漏りやシロアリに対する手だてをはじめ、美術品の手入れ、庭木の伐採などさまざまなメンテナンスが欠かせない。命名式などの祝賀会が開かれた折には会食の段取りもする。建物の状態を適切に把握することや、裏面での細やかな気配りが求められる仕事だ。
 最も気を配るのは明治時代の建物の姿を保つことだ。世界遺産には「真正性」という重要な概念があり、建物は創建時の工法や素材を受け継いで修理することが求められる。雨戸の補修一つにも木材に気を配り、じゅうたんなど調度品も記録が残っていれば同じ業者に発注している。
 占勝閣は英国人建築家ジョサイア・コンドルの弟子、曾禰(そね)達蔵が設計した。英国風の建物に合わせ、調度品は最高級の英国製品をそろえたといわれる。ところが調べてみると、例えば食堂のテーブルは「日本洋家具の父」といわれる杉田幸五郎の作らしいと分かった。
 「調度品の由来は世界遺産になるまであまり気に留めなかった。できるだけ調べて把握したい」と考えている。
 「風光景勝を占める」と長崎港を見渡す絶景が建物の名前の由来だが、2階のベランダから見る庭の景色がお気に入りだ。「四季折々の眺めがとてもきれいです」。担当者ならではの役得を楽しんでいる。

占勝閣前で「歴史ある建物を守っていく重い責任を感じる」と語る吉田さん=長崎市飽の浦町、三菱重工長崎造船所

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