2018年3月期決算 上場企業2,375社「女性役員比率」調査

 2018年3月期決算の上場企業2,375社の役員総数は2万7,526人(前年2万7,843人)。このうち、女性役員は1,049人にとどまり、前年(933人)より116人増加したが、役員全体のわずか3.8%(前年3.3%)に過ぎない。また、1,563社(構成比65.8%)はまだ女性役員がゼロだった。
 業種別の女性役員比率では、サービス業が6.0%(役員総数1,991人、女性役員121人)で最高だった。次いで、小売業5.9%(同1,459人、同87人)、金融・保険業5.6%(同2,214人、同126人)と続き、最低は建設業の2.0%(同1,697人、同35人)だった。依然として業種間のバラツキがみられる。
 女性役員比率が50.0%以上の企業は、老人介護ホームの光ハイツ・ヴェラス(役員総数7人、女性役員数4人)、化粧品の開発・製造販売のシーボン(同12人、同6人)の2社(前年1社)。
 政府は2015年12月、第4次男女共同参画基本計画を閣議決定し、上場企業の女性役員の割合を「2020年までに10%を目指す」目標を掲げた。だが、2018年3月期決算の上場企業の女性役員比率は3.8%で、5%以上は790社(構成比33.2%)と3割に過ぎない。女性の役員登用は少しづつ前進しているが、女性役員ゼロの企業が1,563社(同65.8%)あり、10%の計画実現が難しい現実を浮き彫りにした。

  • ※ 本調査は東京証券取引所など、すべての証券取引所に株式上場している企業のうち、2018年3月期決算の企業を対象に各企業の有価証券報告書の役員状況に記載されている男性・女性の人数を集計、分析した。
  • ※ 本調査の「役員」は、「会社法上の取締役、執行役および監査役など」とした。
  • ※ 業種分類は証券コード協議会の定めに準じる。

女性役員ゼロが1,563社、全体の65.8%

 2018年3月期の上場企業2,375社の役員数は、男性は2万6,477人に対し、女性は1,049人だった。女性役員比率は3.8%で、構成比は前年の3.3%(933人)から0.5ポイント上昇した。また、女性役員が一人もいない企業は1,563社(同65.8%)で、前年の1,646社(同69.3%)から社数は83社減少し、女性の役員登用に向けた動きは緩やかだが進んでいることがわかった。
 2018年3月期で女性役員比率が前年より上昇したのは210社(構成比8.8%)、低下は130社(同5.4%)。前年と同比率は2,035社(同85.6%)で、全体の8割を占めた。

業種別 最高はサービス業の6.0%、最低は建設業の2.0%

 業種別の女性役員比率で、最高はサービス業の6.0%(前年5.2%)。次いで、小売業5.9%(同5.2%)、金融・保険業5.6%(同5.1%)、電気・ガス業5.1%(同5.0%)、不動産業4.5%(同4.2%)と続く。女性役員比率が最高だったサービス業は、役員総数1,991人(前年1,988人)のうち、女性役員は121人(同105人)を占めた。
 女性役員ゼロを業種別にみると、最高は建設業で77.0%(131社中101社)と8割近くを占めた。女性役員比率も2.0%で全業種で最も低かった。
 以下、製造業71.3%(1,105社中788社)、卸売業70.3%(236社中166社)の順で、3業種は7割を超えて女性の役員登用が少ないことが浮き彫りとなった。
 一方、女性役員ゼロの構成比が最も低かったのは、電気・ガス業の35.0%(20社中7社)。社会インフラに直結し、公共的な存在意義に加え、業務との関連で女性役員の登用機会が他業種より多いとみられる。

3月期決算上場企業2,375社

 政府は、女性が企業の意思決定に関わることで多様な価値観が企業経営に反映し、多様な価値観を受容する組織ではイノベーションが促進されるとの見解を示している。
 2013年4月、経済界に対し「役員(取締役、会計参与、監査役若しくは執行役)に1人は女性を登用する」ことを要請している。だが、2018年3月期決算の上場企業では、女性役員比率は3.8%にとどまり、まだ厳しい現実にあることがわかる。ただ、新興市場の東証マザーズは女性役員比率が6.9%と高く、弾力的な人事対応でモチベーション向上につなげている。
 1986年4月の男女雇用機会均等法施行から32年を経過した。女性の役員登用は端緒についたばかりで、女性登用の遅れた業種、サービス業など進んだ業種と明暗を分けている。労働力減少を背景に、多様な勤務形態が求められており、女性の社会進出、役員登用の促進が期待される。

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