BMW 新型6シリーズグランツーリスモ試乗|日常使いからロングドライブまでこなすBMWが考える"GT"とは

BMW 640i xDrive グランツーリスモ Mスポーツ

GTという名を冠してもスポーツ仕様ではない?BMW流のGTの意味とは

「GT(グランツーリスモ)」というと、もっとスポーツカーっぽいクルマをイメージするところだが、BMWの場合は違う。そもそもBMWでは、これまで車種のグレード名として「GT」を用いたことがあまりない。少し前にM4 GTSがあったが、過去を振り返っても、ごく一部の高性能モデルやレース仕様車などに見受けられるにとどまっている。

そんなBMWが「グランツーリスモ」という言葉を車名として使ったのが、2009年に従来型の5シリーズにおける派生モデルのひとつとして設定された5シリーズ グランツーリスモである。その後、3シリーズにもグランツーリスモがラインアップされたのはご存知のとおりだ。

人を乗せて荷物を積んで長い距離を旅する、文字どおりグランドツアーに使うのに適したクルマ。BMWでは「グランツーリスモ」を、まさしくそう位置づけている。日本でいう「GT」とはニュアンスが違うものの、「大旅行」という本来の意味からすると、BMWの使い方のほうが近いといえそうだ。

野暮ったい印象は払拭!?伸びやかでスタイリッシュな印象に

BMW 640i xDrive グランツーリスモ Mスポーツ
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そして、このほど日本にも導入された6シリーズ グランツーリスモは、前出の従来型5シリーズに設定されていたグランツーリスモが6シリーズに移行して再出発したものとなる。なお、グランツーリスモとキャラクターに通じるところのある4ドアクーペの6シリーズグランクーペは、これまでは6シリーズの派生モデルだったが、次世代では復活を遂げた8シリーズの一員になる見込みだ。

4ドアクーペを少し天地方向に伸ばしたようなフォルムは件の従来型5シリーズ時代と共通の手法だが、正直いささか野暮ったい印象があったのと比べると、今回の6シリーズでは一転して伸びやかでスタイリッシュになっていて、大いに好感を抱いた。

ボディサイズはかなり大柄だ。5mをゆうに超える5105mmの全長は7シリーズの近似で、1900mmの全幅や3070mmのホイールベースも7シリーズと同値。1540mmという全高は5シリーズや7シリーズのセダンよりも60mm高い。

ラグジュアリー感ただようインテリアは利便性もGOOD!

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余裕たっぷりの室内空間

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おかげで室内は広々としている。車内にアクセスすると、余裕たっぷりの室内空間とモダンでラグジュアリー感のただようインテリアは相変わらず素晴らしい。

6ライトウインドウに加えて、BMWでは「フレームレス・ドア・ウインドウ」と呼ぶ、いわゆるサッシュレスドアを採用する点も特徴のひとつ。開口幅が大きく確保されたドアと高めのシートポジションおかげで乗降性にも優れ、より開けた視界を得ることができる点がセダン系モデルと異なる。オプション装着されていた広大なガラスサンルーフが、さらなる開放感をもたらしてくれる。

後席の広さも申し分なし!

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後席の居住性も申し分なく、肉厚のシートは電動でリクライニングを調整できる。平均的な成人男性の体格である筆者が座った時のヘッドクリアランスは、コブシが縦にひとつ分ぐらい。背もたれをもっとも倒しても、テールゲートまわりの骨格の膨らみが頭頂部よりも後ろにあるので、頭まわりの広さが損なわれることはない。

ニースペースは、コブシが縦に3つ以上は入るほど余裕があるので足元も広々としているし、ドアポケットは1リットルのペットボトルにも対応しているというから驚く。

トランクは最大で1800リットルまで拡大可能

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トランクも広い。40:20:40分割可倒式のリアシートの背もたれは、シートの肩の部分もしくはトランク後端のスイッチにより電動リモート・ロックを解除して個別に折り畳むことが可能で、通常時の610リットルから最大で1800リットルまで拡大することができる。アンダーボックスの容量もかなり大きい。

車両重量2トン超え!走行性能への影響は?

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発売時点で日本に導入されるカタログモデルは、3リッター直列6気筒DOHCエンジンに8速ATを組み合わせたAWDの640i xDriveのみ。価格は1081万円だ。さらに、同モデルをベースとする限定40台の

「デビュー・エディション」

も同時発売された。

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340psの最高出力と、450Nmの最大トルクを1380~5200rpmという幅広い回転域で発生するエンジンは、ターボエンジンながらまったくターボラグを感じさせることもなく、低回転域から力強くトルクが立ち上がり、踏み込めば7000回転近くまで極めてスムーズに吹け上がる。まさしく絶品というほかない。

そして最新の4輪アダプティブ・エア・サスペンションが、すべての乗員が快適にすごせる乗り心地を提供してくれる。現行7シリーズや5シリーズでも感銘を受けた極めてなめらかな走り味は、このクルマにもしっかり受け継がれていて、しなやかによく動く足まわりが乗り心地だけでなくドライバーに絶大な安心感をももたらしてくれる。車高を任意で上げ下げすることも可能だ。

車両重量は2010kgと2トンを超えるが、コーナリングで見せる軽やかな身のこなしは、とてもそんな気がしない。ただし、ブレーキング時にはやっぱり重いということを思い出した。車検証によると前軸重が1000kg、後軸重が1010kgと、ほぼ50:50の前後重量配分を実現しているのもBMWらしい。

このようにBMWの考えるGT=グランツーリスモの最新モデルは、スタイリッシュで走りもよく、実用性に優れ、装備も充実しているなど、あらゆる要素をハイレベルに身に着けていた。日常使いはもとより、実際にロングドライブに出かけるとなおのこと、このクルマの素晴らしさを深く実感できることに違いない。

[Text:岡本 幸一郎/Photo:茂呂 幸正)

BMW 640i xDrive グランツーリスモ Mスポーツ 主要スペック

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