クリスティーナ・アギレラ『リベレーション』 同調することなく、声を上げなさい

クリスティーナ・アギレラ『リベレーション』

 “解放”(リベレーション)と冠したアギレラ6年ぶりの新作は、暗闇の中で「あなたはどこ?」「そこにいるの?」とたずねる彼女の囁きから始まります、それは彼女の自分探し。そしてイントロに続いて歌われるのはなんとミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』の「マリア」の一節。厳格な修道院の規則に反発したあのマリアが、彼女の自分探しの象徴として表現されます。現代に至っても女性という理由で抑圧される社会に対して“決して同調することなく声を上げなさい”という彼女のメッセージは、デミ・ロヴァートをフィーチャーした女性解放のアンセムとも言うべき「フォール・イン・ライン」によって高らかに歌い上げられます。

 グラミーは逃したもののアルバム『レモネード』(2016年)でビヨンセは、歴史的に抑圧されてきた黒人女性の解放をメッセージし高い評価をうけました。対してグラミー5冠に耀くアギレラがポップス界の女王として作るべき作品は何か。本作がその回答といえるでしょう。

(ソニー・ミュージック・2400円+税)=北澤孝

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