金属行人(8月1日付)

 「無利息貸し付けが国を富ませる」という。理由は「元本が増えるのをよしとするのではなく、貸付高が増えることをもってよしとするから」。貸付高が増えれば、それだけ経済規模が大きくなり、暮らしは楽になる。読者諸氏はどう考えるか▼富の代表は「お金」。現代社会のお金=富の根源は「信用」。信頼できる銀行が「信用創造」することで元本が増え、貸付高も増えていく。経済成長につながる。こんなフォーミュラを私たちは描きながら元本を増やそうとしゃかりきになる▼貸付高が増えて国が富むための条件は「返済すること」。決して、配りっ放しではいけない。そして「生産すること」だろうが、無利息貸し付けを奨励することは信用創造を「民」に預けることのようにもみえる。とすれば、今の超低金利や異次元の金融緩和も正解なのだろうか。バトンはすっかり「民」に渡されているということか。何にしても限度はあるだろうが▼ところで文頭の考えは二宮尊徳のもの。その言葉の後で尊徳は「死ななければならないということを覚悟すれば、生きている毎日は利益。生まれたときすでに、死は決定している。これを忘れてはならない。夜が明けたら、暮れる。これが生きているということ」と語っている。

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