【JFE条鋼の新中期経営計画】〈水島製造所の取り組み・稲富淳所長に聞く〉設備耐久性高め生産安定化 技能伝承の仕組み作り人材育成

――第6次中計における水島製造所の取り組みは。

 「第5次中計では厳しい販売環境下、数量減とスプレッドの中でコスト目標は達成した。一方、利益は黒字を出したが、計画に対して大幅な未達となった。第6次中計では、10年後の水島のあるべき姿を想定して計画を策定した。どんな環境でも生き残ることができる、安全で強靭な製造所を作り、鉄筋業界内でトップクラスの製造コストを達成する」

――足元の生産量は。

 「今年度も前年度横ばいの見通しだ。少子高齢化や住宅建設市場の縮小を考慮すると生産量は減少傾向だろうが、何とか現状の生産量を維持していく計画だ。今中計では安定した生産量と収益の確保を目指している。現在でも体制はある程度出来上がっており、足元の95~96%の稼働率を98%まで引き上げるため、予防保全体制の整備と点検強化を進めていく」

――設備投資計画は。

 「水島の3カ年総設備投資額は減価償却費の増加を抑えつつも耐久性を高める投資を行う。老朽化更新時には、過去の事故歴を洗い出して耐摩耗性や耐食性を高めた素材を採用するなどの手を打つ。的確かつ積極的な更新を続ければ、現場の事故発生頻度が減少して稼働率は自然と上昇するだろう」

――品質面の取り組みは。

 「顧客目線で必要な品質をいかに作り上げるかが課題。自己満足に終わらせず、顧客の要望をよく聞きながら、進めていく。企業責任としての不良品流出防止に努めることも肝要だ。曲がりや真円度に対しては、画像解析を使うなどして品質向上を図る」

――人材育成は。

 「SE(スキルエキスパート)を中心に、技能伝承の仕組み作りを行う。人材育成は社員の技能レベルを可視化したマップを活用し、重要設備の縮小スケール模型を動かしながら分かり易く教育するほか、導入したアイマークシステムを生かして、現場熟練作業者の目の付けどころを可視化するなど、習得しやすい教育資料の整備を進め、今後の人材育成に生かす」

――新商品開発について。

 「JFEスチール西日本製鉄所・倉敷地区内に立地する利点を生かし、JFEグループ内のコラボレーションによる新たな製品の開発を模索する。例えば、高靭性の鉄筋ができればコンクリート壁も倒れにくくなるし、鉄筋の粘りでコンクリートの飛散を軽減できるため、シェルターなどへの採用も可能ではないか。時間は掛かるとは思うが、今中計の最終年度には形にしたい」

――資源リサイクル事業の進捗状況は。

 「この数年間で順調に処理拡大が進み、今年3月には、廃棄物処理の累計量は10万トンに達した。処理量増加に対応し、テント倉庫(延べ床面積500メートル)を設ける。コスト低減に向けた新たな原料利用法も考えており、早急に取り組みたい」

――愛着度アップの方策は。

 「元来、社員の愛着度は高い。安定操業と日本トップクラスの製造所が自分たちの会社であると認識すれば、自信と愛着度は自然とさらに上昇しよう」

――西日本豪雨の影響は。

 「幸い人的・設備被害はなく、操業は一時停止したものの、すぐに通常操業に戻している。しかしながら、自宅が床上・床下浸水の被害を受けた社員がいる。被災した社員には、避難所よりプライバシーが保てると思い、会社近くの社宅を提供している。また、被災した仲間を支援するため自発的に活動した社員もおり、ありがたいと思っている」(小田 琢哉)

© 株式会社鉄鋼新聞社