西武・相内が見せた大敗の中の無失点登板 「プロの世界で生き残るためには」

西武・相内誠【写真:編集部】

昨季までプロ5年で1軍登板は10試合

■ソフトバンク 14-6 西武(1日・メットライフ)

 1日のソフトバンク戦に6-14で大敗した西武。しかし、最終回に代打・森友哉が満塁本塁打で意地を見せた。そして投手陣で光明が見えたのは、3番手で登板した6年目右腕・相内誠投手であった。

 相内の1軍登録は7月22日。球団公式ツイッターで「まだ7回裏後の風船拾いしかしていないので、試合でアピールしたい」と試合前に語っていたが、その思いが通じたのか、この日再登録後初の実戦登板を果たした。「緊張とかはなかったが不安はありました」という相内は、「ブルペンでは投げていても、バッターとの対戦、試合での感覚は違うもの。実戦から遠ざかっていたことで、ファームでやってきた通りに投げられるのか。そこが不安だった」と試合後、本音を吐露した。

 しかし、そこは高校時代「房総のダルビッシュ」の異名がつくほどの右腕。「点差も点差だったので、とりあえず細かいコントロールなどは気にせず、打たれてもいいからフォアボールだけは出さないようにしよう」と腹を括っての投球で、勢いづいたソフトバンク打線を2回1安打無失点に抑えた。辻監督は「点差が開いていたから参考記録」としながらも、「無失点で抑えたことは良かったんじゃないかな」と、今回の登板に及第点を与えた。

 その相内。戦っていたのは対戦相手のソフトバンクだけではなかった。「1軍に残るということは本当に争い。他の投手より、いい投球をして自分が1軍に残る。そこを意識してやっている」と、優勝を目指すチームメイトとの1軍枠をかけた戦いも意識しての投球だったという。

「結果を残して、最終的には勝ちパターンで」

「(登板機会は)全部チャンス。どんな起用でも、投げさせてもらえることが大チャンス」とマウンドに上がる瞬間瞬間を大切にする。この日まで1軍登板は通算10試合で0勝6敗 防御率12.91だった。「プロの世界で生き残るためには、どんな形でもいい。今までが全部ダメだったので、もう失うものはない」と気合十分。「今日で最後のマウンドになってもいいというくらいの気持ち」と決意を固め、マウンドに立っていた。

 実は試合後、辻監督も「前の2人がダメなら、俺が生き残れる! それくらいの気持ちで投げないと。そういう期待をして投げさせた」と起用意図を明かしたが、それは相内自身の考えとも一致していた。

 打線の好調もあり、優勝戦線のトップを走る西武だが、投手陣の台所事情は苦しい。先日も中日から左腕の小川龍也投手を獲得したほか、31日には元レッドソックス傘下3Aの“カウボーイ”、カイル・マーティン投手を獲得。リリーフ強化を図るチーム内で登板機会が減少していく可能性もある中、ひとまずは指揮官に及第点をもらい、次のチャンスを掴んだだろう。

「今は中継ぎでも一番下っ端。(敗戦処理でも)5点差、4点差、3点差とどんどん点差の少ない場面で投げさせてもらって、そこで結果を残して、最終的には勝ちパターンで投げさせてもらえるようになりたい」

 月夜に照らされ輝く瞳は、早くも“次のチャンス”を見つめていた。(岩国誠 / Makoto Iwakuni)

© 株式会社Creative2