【MLB】2つの“ワシントン”はWSへ進めるか… 世界一チームに共通する意外なステップ

ナショナルズを牽引する活躍を見せるブライス・ハーパー【写真:Getty Images】

近年はオールスター開催地がワールドシリーズへ躍進

 7月17日にメジャーのオールスター戦が行われた。会場は首都ワシントン。同地での開催は2代目セネタース(現レンジャーズ)が本拠地としていた1969年以来のことだ。ナショナルズがホストとなったのは初めてだった。

 試合前夜のホームラン・ダービーでは地元のブライス・ハーパーが優勝。球場はこの上なく盛り上がり、ハーパーも「スタンドからの声援が力になった」と感謝していた。

 本番の試合ではナショナル・リーグの先発を務めたマックス・シャーザーがヤンキースのアーロン・ジャッジに一発を浴び、ハーパーは無安打に終わってナショナルズ勢の活躍は見られず残念だったのだが、両チーム合わせて過去最多の10本塁打が乱れ飛ぶ華やかな一戦であった。

 さて前述の通り、首都ワシントンでメジャーのオールスター戦が行われたのは49年ぶりなのだが、ワールドシリーズは1933年が最後である。現在ツインズになった初代セネタースがジャイアンツに1勝4敗で屈したのであった。だが、ナショナルズは前身のモントリオール・エクスポス時代を含めて一度もワールドシリーズに出たことがない。現在のメジャーリーグ30球団でワールドシリーズ未出場はナショナルズと、ワシントン州シアトルのマリナーズの2つだけ。アメリカ合衆国の初代大統領の名を冠した土地をホームにする2球団がワールドシリーズに進んだことがないのである。何やら皮肉な気がする。

 ここ20年ほどを見ると、オールスター開催をばねにしてワールドシリーズに駒を進めている例がある。2003年のオールスター戦はホワイトソックスの本拠地USセルラー・フィールドで開かれ、2年後の2005年、ホワイトソックスは現在ロッテ監督の井口資仁らの活躍で88年ぶりのワールドシリーズ制覇を果たした。2004年のオールスター戦はアストロズの本拠地ミニッツメイド・パークでの開催だった。アストロズは翌2005年、ワールドシリーズ初出場を遂げた。

マリナーズは2001年にオールスター開催も…

 さらに、2007年にオールスター戦のホスト球団となったジャイアンツは2010年に8年ぶりのワールドシリーズ出場、56年ぶりの同シリーズ優勝とした。2008年のオールスター戦を開催したヤンキースは翌2009年に松井秀喜がMVPとなる活躍でワールドシリーズ優勝。2009年のオールスター戦はカージナルスのブッシュ・スタジアムだったが、カージナルスは2011年に5年ぶりでワールドシリーズ制覇。2012年にはロイヤルズのホームでオールスター戦が開かれ、2年後の2014年にロイヤルズは29年ぶりでワールドシリーズに進み、2015年には30年ぶりで頂点に立った。2013年のオールスター開催地はニューヨークのシティ・フィールド。ここを本拠地とするメッツは2年後の2015年に15年ぶりのワールドシリーズ進出を果たしているのである。

 かようにオールスター開催は躍進へのきっかけとなってきた。ナショナルズも今年を弾みにワールドシリーズ初進出を果たしたいものである。

 しかし、ここで気付いてしまった。ナショナルズとともにワールドシリーズに出たことのないマリナーズのことだ。2001年に地元でオールスター戦を開催したのだが、同年アメリカン・リーグのチャンピオンシップ・シリーズまで進んだものの、それを最後にプレーオフに進出したことがないのだ。メジャーリーグではもちろん、フットボールのNFL、バスケットボールのNBA、アイスホッケーのNHLを含め、アメリカ4大プロスポーツで現在最もプレーオフから遠ざかっているのである。

 さて、ナショナルズは近いうちにワールドシリーズまで進めるだろうか? ちなみに本拠地でオールスターが行われた年にワールドシリーズまで進んだ球団は1997年のインディアンスが最後である。(樋口浩一 / Hirokazu Higuchi)

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