〈八戸三社大祭〉大黒柱不在、逆境バネに一丸 八戸市職員互助会

山車絵師・夏坂和良さん不在の中、一丸となって山車を完成させた八戸市職員互助会の制作者たち=1日、八戸市

 「完成してほっとしたというのが正直な気持ち。良かった、本当に...」。八戸市職員互助会山車制作責任者の北城(きたじょう)布佐子さん(49)は出来上がった山車を見つめながら、かみ締めるようにつぶやいた。

 毎年独創的な山車で市民や観光客を楽しませてきた互助会。しかし、これまで制作の中心を担ってきた、八戸三社大祭を代表する山車絵師・夏坂和良さん(59)が4月、体調を崩して入院。"戦線離脱"を余儀なくされた。他の制作者たちも東京転勤など予想外の事態が相次ぎ、今年はかつてない危機に見舞われた。

 「山車が作れるのか」。不穏な空気が漂ったが、制作者たちはこの逆境を力に変えた。

 今年は、江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎がテーマ。題材を考えた夏坂さんの思いを形にするよう、長年にわたって制作を共にしてきた「一番弟子」の来(らい)迎(こう)高志さん(37)が山車絵を初めて作画した。

 "東京組"でもあり、北斎が生まれ育った東京都墨田区を巡ってはイメージを膨らませた。八戸で手に入りづらい和紙や電飾を購入して新たな表現につなげるなど、東京にいることをプラスへ転化していった。

 山車小屋では制作8年目の北城さんが中心となり、来迎さんが携帯電話のテレビ電話機能を使って画面越しでチェック。人形の表情や角度など完全には確認し切れないが、長年培った仲間の技術と感性を信じた。

 山型になるように人形を配置する夏坂さん得意の技術も取り入れ、大黒柱の不在を感じさせない迫力の山車が完成。お通りが行われた1日、北斎の作品が彩る斬新な山車は見物客からの注目を大いに集めた。

 祭りに合わせて帰省した来迎さんは「苦しい道のりだったが、作るごとに全員がこだわりを持つようになった」。胸を張る姿に大きな自信がのぞいた。

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