“GT2”のネーミングが復活。SROが700馬力級の新カテゴリーを創設へ

 ブランパンGTシリーズを主宰するSRO(ステファン・ラテル・オーガニゼーション)は、高性能スーパーカーを用いた新たなカテゴリーとして“GT2”の名称を用いた新規定クラスを創設するとアナウンスした。

 この新クラス創設のアイデアは、主にアマチュアドライバーに向けられたもので、新規車種をベースに2020年のブランパンGTシリーズ・スプリントシリーズなどでGT3クラスを補完するものになると考えられている。

 そのため、この新クラスは前述のスプリントカップやブランパンGTシリーズ・アジア、SROが管轄するPWCピレリ・ワールドチャレンジ、そしてブリティッシュGTチャンピオンシップで、GT3勢とともにレースを開催する形態を目指しているという。

 先日ベルギーで開催されたスパ24時間レースのパドックで、発表会に臨んだSRO代表のステファン・ラテルは、この新カテゴリー創設はいまだ発展を続けるGT3に対する「必然のリアクション」から生まれた、と説明する。

「GT3の絶え間ない進化によりダウンフォースは年々増加を続けており、いまやジェントルマンドライバー、愛好家たちが手に負えるレースカーではなくなりつつある。それほどドライビングが困難になってきているんだ」と状況を説明したラテル。

「現に“アマチュア”は消えつつある。例えば、ブランパンGTシリーズのスプリントカップは、現状アマチュアドライバーはゼロだ」

「我々はレースのフォーマットに大きな変更を加える必要はないと思っているが、シリーズをさらにエキサイティングにする、よりパワフルなクルマやスーパーカーの増加は大歓迎だ」

 このアマチュアに向けた新カテゴリー創設に関して、既存のGT4との棲み分けを尋ねられたラテルは「このGT2は、GT4クラスとは異なるよりハイパワーなモデルがベース」だと、そのコンセプトを語っている。

 この基本思想により、エアロダイナミクス面の開発が制限されるほか、エンジンやトランスミッションの変更も認められない。また、出力面のターゲットとしては700馬力程度を見込んでおり、これはGT3の560馬力を上回る数字となっている。

■ステファン・ラテル代表「新GT2は現行のGT3にとって代わるものではない」

 この新クラス導入により、例えばブリティッシュGTでは現在のGT3とGT4によるレースではなく、GT3/GT2とGT4を別のシリーズへとセパレートすることも希望したい、と続けたラテル。

「もしブリティッシュGT4カップとしてシリーズを分割できれば、現状GT3が12~14台程度のメインシリーズは、間違いなく26~40台規模の参戦台数を確保できると思う」

「つまりGT2でアマチュアの参戦を助け、グリッド参加台数を補強し、シリーズの成長を促すことができるはずなんだ」

 合わせてラテルは、このGT2カテゴリーが具体的にどの車種を対象としているかについて明確な回答を避けたものの、いくつかのマニュファクチャラーからは「肯定的なフィードバックを得ている」とし、2019年には最初のGT2車両を披露できる、としている。

 またその導入に先立ち、ブランパンGTスポーツクラブ・シリーズで、アマチュア限定の単発イベントもテスト開催する計画だという。

 さらにGT3車両に対して車両重量が嵩むことも予想され、長距離イベントには適さないとして、ブランパンGTのエンデュランスカップには組み込まない意向も示した。

 発表会の席上では、このGT2カテゴリーが現状のGT3に取って代わる存在ではないことを強調しつつ、将来的にはGT3が「最悪の事態に陥った際の代替案」となりうることも匂わせたラテル。その背景には、FIAによるGT3とLM-GTE併合の動きがあったことも関係しており、その試みが失敗に終わったことも指摘しつつ、もしそうなっていた場合には「マシン購入費用やランニングコストが飛躍的に増大していただろう」との見通しも明かした。

「GT3という非常に健全で、成功したカテゴリーに置き換えることはまったく考えていないが、一方でこの新カテゴリーが我々SROの新たなセーフガードになることも期待している」

 この新カテゴリーの”GT2″という呼称は、現在のLM-GTEクラスがかつて名乗っていた名称を復活させた形ともなっている。

© 株式会社三栄