社説:最低賃金 引き上げに後押し必要

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 正社員やアルバイトなど全ての労働者に支払われる賃金の下限額「最低賃金」について、国の審議会は全国平均の時給を26円引き上げ、874円とする目安をまとめた。

 深刻な人手不足を背景に、政府が昨年3月にまとめた「働き方改革実行計画」で掲げた3%程度の引き上げ目標に合わせる形で決着した。2002年度に時給で示す現在の方式となって以降、最大の引き上げ幅である。

 それでも、目指す「時給千円」には程遠い。生活を送るのに十分な水準とは、とてもいえないのではないか。

 日本の最低賃金は国際的に低い水準にとどまっている。労使が参加した審議会の議論で、労働者側は「現状の最低賃金水準では年収が200万円にも満たない」と指摘した。

 非正規労働者は過去最多の2133万人に達し、働く人の約4割にまで増えている。最低賃金が及ぼす影響は大きい。

 労組は「人間らしい暮らしができる最低限の時給は1500円」と主張している。

 国の目安を参考に都道府県がそれぞれ最低賃金を決定し、秋以降に順次改定するが、大都市圏と地方の格差拡大も問題だ。

 目安通りに引き上げても、最高額の東京都と最低額の沖縄県などの格差は現在の221円から225円に広がる。地方を中心に19県がなお時給700円台にとどまるという。

 地方創生の掛け声と相反すると言わざるを得ない。都道府県の審議会は、目安を上回る積極的な引き上げを検討してほしい。

 一方で、「官製賃上げ」の限界も近づいている。政権主導の急ピッチの引き上げに、中小企業などが「経営が成り立たなくなる」と悲鳴を上げ始めている。

 法的強制力がある最低賃金引き上げは、労働者の処遇を改善するが、企業には負担となる。

 残業の上限規制などが盛り込まれた働き方改革関連法が成立したばかりだ。人手が足りない中、中小企業にとっては残業の抑制も容易ではない。

 大企業の負担のしわ寄せを受けるような劣悪な下請け構造を脱し、賃金アップできる環境を整備しなくてはならない。

 政府は目標を掲げるだけでなく、具体的な手だてを示すべきだ。生産性向上につながる支援や税制優遇などの後押し策が求められるのではないか。

[京都新聞 2018年08月03日掲載]