金属行人(8月3日付)

 2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)を経営方針や事業戦略に取り込む企業が増えている。「持続可能」と言うと気候変動への対応などが一般的だが、関連市場の規模は1200兆円とされ、関連技術・サービスの開発・実用化を目標に掲げる企業も多い▼猫も杓子もSDGsという状況で、これに関連する何らかのコミットメントを公表しないと立ち後れた企業というイメージを刷り込まれかねない。鉄鋼メーカーはとかくアピール下手だから、心配ではある▼新日鉄住金が2日発行した環境・社会報告書を見て、その心配は杞憂に変わった。報告書は特集ページでSDGsへの貢献を詳細に紹介。これを見れば開発目標(ゴール)のほとんどに鉄鋼業が直接・間接に貢献していることが分かる▼鉄鋼業の貢献が特に期待されている分野がある。開発目標9「産業と技術革新の基盤構築」だ。途上国でのインフラ整備などを念頭に置いた目標ではあるが、西日本豪雨の被害の大きさを見れば、日本にとっても喫緊の課題と言える。「誰一人取り残さない」社会の実現がSDGsの最終目標。これには安全・安心が欠かせない。高度な技術・ノウハウを蓄積する日本鉄鋼業への期待は大きい。

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