2018年3月期決算「上場企業1,893社の平均年間給与」調査

 2018年3月期決算の上場企業1,893社の平均年間給与は620万8,000円(中央値608万円)で、前年より6万7,000円(1.0%増)増えた。2010年3月期から8年連続の増加で、8年間で54万6,000円(9.6%増)上昇した。伸び率(前年比1.0%増)は、2017年3月期(同0.6%増)を0.4ポイント上回り、2016年3月期(同1.0%増)以来、2年ぶりに1%台を確保した。
 平均年間給与の最高は三菱商事の1,540万9,000円。総合商社は上位3位のほか、1,000万円以上の24社に7社。業種別トップは、建設業(728万4,000円、前年比1.6%増)で、2年連続だった。一方、金融・保険業(642万3,000円、同0.1%減)は、唯一前年を下回り落ち込みが際立った。
 増加率トップは、不動産開発の日本商業開発(1,368万5,000円、前年比39.5%増)。また、株式上場から11年連続で増収増益を達成したアパレル通販サイト「ZOZOTOWN」運営のスタートトゥデイ(524万9,000円、前年比11.4%減)は、前年より67万9,000円減少し、減少率ランキング7位に登場した。減少の理由は「回答を差し控える」(同社広報担当)とした。
 経団連が集計した2018年夏の大手企業の賞与は、前年比8.6%増の95万3,905円で、過去最高を記録。業績好調を背景に上場企業の平均年間給与の上昇傾向が続く。一方で人手不足に対応した人件費アップと収益確保のかじ取りが重い課題となっている。特に、景気拡大の波に乗れない企業は「利益なき成長」に陥る可能性も残している。

  • ※本調査は2018年3月期決算の全証券取引所の上場企業を対象に、有価証券報告書の平均年間給与を抽出、分析した。2010年3月期決算から連続して比較可能な企業を対象(変則決算企業は除く)とし、持株会社は除いた。業種分類は証券コード協議会の定めに準じた。
  • ※持株会社は対象外。
上場企業1,893社平均年間給与推移

市場別 トップは東証1部、地方上場とは約130万円の差

 上場企業1,893社を市場別にみると、トップは大手が集中する東証1部で665万5,000円。次いで、マザーズ(601万1,000円)、東証2部(557万6,000円)と続く。最低は札証、名証、福証など地方上場の535万3,000円で、東証1部と地方上場の差は130万2,000円だった。
 伸び率では新興市場のマザーズが前年比1.4%でトップ。マザーズは平均年齢が37.8歳と最も若く、唯一30歳台にもかかわらず平均年間給与は東証1部に次ぐ水準だった。一方、地方上場は平均年齢が42.2歳と最も高かったが、平均年間給与は最も低い結果となった。

上場企業1,893社平均年間給与 市場別

業種別 建設業が2年連続トップ 金融・保険業のみ前年比マイナス

 業種別のトップは、建設業の728万4,000円だった。以下、不動産業(723万6,000円)、水産・農林・鉱業(706万4,000円)と続き、上位3業種が700万円台に乗せた。
 建設業は前年に引き続き、2年連続でトップを維持した。活発な建設投資を背景に、好決算が続出した上場ゼネコンが牽引した。
 一方、最低は小売業の474万7,000円で、唯一の400万円台となった。次いで、サービス業が525万6,000円で、この2業種を除く業種は600万円台以上で、下位2業種とその他の業種との格差が歴然としている。ただ、小売業は5年連続、サービス業は8年連続で増えており、深刻な人手不足に対応した待遇改善は進んでいる。
 増減率では、10業種のうち、金融・保険業(前年比0.1%減)を除く9業種で前年を上回った。伸び率トップは、不動産業(同2.7%増)で、都市部を中心に不動産市況が業績に寄与した結果とみられる。次いで卸売業(同2.1%増)が続き、上位2業種が伸び率2%台。建設業と製造業の2業種が1%台で、半数の5業種が伸び率0~1%未満だった。
 唯一、前年を下回った金融・保険業は2年連続で減少した。マイナス金利の継続や低金利競争の激化など、金融機関を取り巻く深刻な収益環境を浮き彫りにしている。

上場企業1,893社平均年間給与 業種別

平均年間給与1,000万円以上は24社、500~700万円に約6割が集中

 個別企業の平均年間給与トップは、三菱商事の1,540万9,000円。以下、伊藤忠商事(1,460万9,000円)、三井物産(1,419万9,000円)と大手総合商社が上位を独占した。総合商社では6位に丸紅(1,322万円)8位に住友商事(1,304万1,000円)、14位に双日(1,103万円)、19位に豊田通商(1,051万7,000円)などがランクインした。このほか、不動産やゼネコン、メーカーなど各業界を代表する大手が上位に並んだ。
 増加率ランキングトップは、不動産開発を手掛ける日本商業開発(1,368万5,000円、前年比39.5%増)。高収益案件の増加で営業職の従業員のインセンティブ収入が増加したことが主な要因となった。
 平均年間給与1,000万円以上は24社(構成比1.2%)で、前年より3社増加。社数の最多は500万円以上600万円未満で、555社(同29.3%)と3割を占めた。また、500万円以上700万円未満のレンジ内に1,092社(同57.6%)と、全体の約6割が集中した。国税庁が発表した2016年分の民間給与実態統計調査(平均給与421万6,000円)と比較しても、上場企業の給与水準が高いことを裏付ける結果となった。

上場企業1,893社平均年間給与 金額別
上場企業1,893社平均年間給与 前年比増減率ランキング

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年8月6日号に「上場企業平均年間給与ランキングTOP50」を掲載予定)

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