ブッシュ氏治療の著名医師射殺、20年前の母親の死に復讐か

By 太田清

ヒューストン警察が公表した自転車に乗る容疑者の映像。ツイッターから

 ブッシュ(父)元米大統領を治療したこともある著名な心臓専門医が7月20日、米南部テキサス州ヒューストンで自転車に乗った男にいきなり銃撃され死亡した。警察は元警官の男を容疑者と断定、指名手配して行方を追っているが、警察が発表した犯行動機は驚くものだった。20年前にこの医師の執刀の元、母親が手術を受け死亡したことに対する復讐だというのだ。地元紙ヒューストン・クロニクル(電子版)などが2日、伝えた。 

 医師はマーク・ハウスクネヒトさん(65)で、この日白昼、自転車に乗り勤務先の病院に向かう途中に、同様に自転車に乗った男に2発撃たれ死亡、男は逃走した。警察は寄せられた匿名の情報などから、男を同州の警官を約30年間務めたジョセフ・ジェームズ・パパス容疑者と断定、写真を公開し指名手配するとともに同容疑者の自宅を捜索した。 

 パパス容疑者は知人に自殺をほのめかすメールを送っており、警察は「自暴自棄となっており、銃器を携帯している可能性もあることから大変危険」として、発見した場合、すぐに警察に通報するよう求めている。 

 犯行動機として警察は20年前の母親の死に対する復讐の可能性を挙げたが、なぜ今になって犯行を実行したのかは不明としている。会見した警察当局者は「犯行は周到に計画されていた」と指摘した。警察の調べによると、パパス容疑者は逃亡前に所有する拳銃やライフル銃、弾薬などを売却しようとしていたという。 

 2012年に救急医療に関する論文集に発表された研究によると、2000~11年の間に病院での医療に関わる銃撃は154件報告され、うち27%以上が何らかの怨恨を抱いた「確信的な銃撃犯」によるものだったという。テキサス州医師会のダグラス・カーラン会長はヒューストン・クロニクルに対し「診療や治療ではなく、患者の病気の深刻さを伝えることが、我々の仕事で最も難しいことであることがしばしばあります。愛する人を治せないということを理解するのに、つらい時を過ごす人もいるのです」と語った。 (共同通信=太田清)

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