三菱 エクリプスクロス 試乗レポート|悪路もワインディングもこなし車内も広い「次世代万能選手」の性能を体感!

三菱 エクリプスクロス イラスト:遠藤イヅル

ライバルひしめくコンパクトSUVクラスに投入された三菱の新兵器

三菱 エクリプスクロス

昨年秋の欧州での発売を皮切りに、2018年3月から国内発売が開始された三菱 エクリプスクロス。今や販売のボリュームゾーンとなったコンパクトクロスオーバーSUVはトヨタ C-HR、日産 ジューク、ホンダ ヴェゼル、マツダ CX-3、スバル XV、ボルボ XC40、ルノー キャプチャー、アウディ Q2など国内外の魅力的なライバルがひしめいている。

量販モデルとしてだけでなく世界戦略車の使命を帯びている車種も多いため、どのモデルも各メーカーともに手抜かりなくしの力作ぞろいだ。出せば売れるかもしれないクラスだが、逆に言えば厳しい戦場でもある。

結論から言ってしまえば、エクリプスクロスはこの市場に打って出る三菱の新兵器として十分な出来と三菱らしいキャラクターを備えていた。その理由を紐解いてみたい。

クーペルックを裏切らない十分以上の動力性能とハンドリング

三菱 エクリプスクロス
三菱 エクリプスクロス

エクリプスクロスという名前を聞いて、かつて三菱に存在したスペシャリティクーペ「エクリプス」を思い出す人も多いだろう。その名を引き継いだエクロプスクロスは、コンパクトSUVの中でも特にスポーティなクーペルックが際立つモデルだ。

アウトランダーにも通じる最近の三菱ファミリーフェイス統一顔はよりシャープに造形され、下端ラインがボディ後部に向かって上がっていくサイドウインドウと短いリアのオーバーハングは、心地よく切れ上がったスタイルを作り上げている。

後方視界を確保するために2分割されたハッチの窓の間を通るテールライトはまるでリアスポイラーのようにも見える。装飾過多や曲面主体のクルマが多い昨今、シャープで無駄のない面構成と造形を持つのはむしろ新鮮。長く飽きのこないデザインになるだろう。

SUVらしからぬキレのあるハンドリングと軽やかなエンジンフィール

三菱 エクリプスクロス
三菱 エクリプスクロス
三菱 エクリプスクロスと筆者の遠藤イヅル氏

そしてオンロードでも走りはそのスタイリングから想像される以上に快活でキレがいい。1.5リッター直噴ターボエンジンはスペック的には150psと低めに思われるが、マッチングの良いCVTによってその数値以上の性能をエクリプスクロスに与えている。トルクは2000回転という低回転域で240Nmを発生するので、全域で気持ちの良い加速をしてくれる。

古くからのファンなら240Nmという数値が以前の表記でいう24.5kg-mに相当すると聞けば、「おお、それは2.5リッタークラスのノンターボ車と同じくらいだな」と思うかも。数値でクルマの性能を語るわけではないが、エクリプスクロスが実用域で乗りやすく速いクルマだということがわかるだろう。

CVTの出来にも触れておきたい。いわゆるCVT特有のタイムラグは少なく、意図的に設けられた「8速ギア」によってまるでオートマチックのようなフィールを感じられ、ステアリング裏のパドルシフトでのシフトアップ/ダウンも楽しめる。中低速コーナーのハンドリングもしっかりしていて、背が高いSUVであることを忘れさせてくれるほど。攻め込まなくても日常生活で遭遇するようなコーナーでハンドリングの良さを実感できるだろう。

三菱 新型エクリプスクロス G Plus Package[4WD] フロントシート

全席居心地の良いインテリアとつかみやすい車両感覚

三菱 新型エクリプスクロス G Plus Package[4WD] インテリア・インパネ回り
三菱 新型エクリプスクロス G Plus Package[4WD] スマートフォン連携ディスプレイオーディオ(SDA)
三菱 新型エクリプスクロス G Plus Package[4WD] リアシート(200mmスライド&9段階リクライニング機能付き)

コンパクトSUV市場を戦うべく生まれた車種として、そして三菱の真面目なクルマ作りが反映されているエクリプスクロスには他にも美点がある。まず驚くのは車内が静かなことと、乗り心地が良いこと、フロントシートの出来も良いことだ。

蹴上がったデザインのサイドウインドウだが、リアシートはフロントよりも一段高いために側面、前方ともに見晴らしが良く、また足元空間も全長4.4mほどのクルマとしてはかなり広い部類に属する。ただし難を言えばリアの乗り心地はフロントに劣り、シートも表皮の関係で体が滑りがちなので、せっかく備えたリクライニングシートも背もたれを立て気味にして座った方がお尻の収まりが良かったことは残念なポイントだった。

とはいえリアシートの居住空間が快適であることに変わりはない。ライバルのC−HRのそれが閉鎖的なのに比べると外が良く見え、かつ程よい閉塞感があり、そして頭上空間、足元ともに十分なスペースがあるエクリプスクロスは快適なセダンのような居心地だったことは忘れられないポイントだ。

ラゲッジスペース容量も使い勝手も過不足なく、実用性も高い。インテリアもシンプルかつ操作性に優れている。エアコンの操作はボタン式でわかりやすい。空調のスイッチはタッチスクリーンより実ボタン式がいいと思うのは筆者だけだろうか。

ダッシュボードのアクセントになっているシルバーも適度でしつこくなく、上級車の雰囲気を車内にもたらしている。デザインが華美でなく落ち着いているのもエクステリア譲りで好ましい。

また、車両感覚がつかみやすかったことも付け加えたい。全幅は1805mmあり決して狭くはないが、ミラーの飛び出しが少ないこと、ダッシュボードの上端が低めで前方の見晴らしがとても良いこと、後方視界も分割式のリアウインドウが効果を出して思いの外良く、車両感覚がとてもつかみやすかった。

乗り込んだ瞬間に車両の四隅、タイヤの位置がわかるクルマとそうではないのがあるように思うが、エクリプスクロスは前者だった。

SUVらしさ全開!キャンプサイトや悪路も似合うエクリプスクロス

三菱 エクリプスクロス
三菱 エクリプスクロス

取材場所に入るまでの未舗装道やキャンプ場内の凸凹路面など、一般車では走ることも入ることも憚られてしまうような道も、エクリプスクロスならどんどん走っていけることに感動した。

SUVなら当たり前の性能ではあるのだが、乗る前にクーペルックのハッチバック的なスタイルを見て、設えの良い室内空間に入ってしまうと「これで悪路も走れるんだ」ということが意外に感じられた。なおアプローチアングルは20.3°、ディパーチャーアングル30.8°、最低地上高は175mmが確保されており、多少のラフロードはものともしないだろう。

試乗車は、三菱が長年にわたるモータスポーツ参戦で培った技術をフィードバックした4WDシステム「S−AWC(SUPER ALL WHEEL CONTROL)」を備えていた。基本的に「AUTO」にしておけば問題ないが、雪道用の「SNOW」、ラフロード用に「GRAVEL」モードも選択できるのは心強い。この4WDは悪路や雪道走破のためだけでなく、オンロードを含めたあらゆる路面状況でもクルマを意のままに操ることができるための車両運動総合制御システムとなっており、ドライビングの安心感を高めてくれる。

悪路を何事もないように砂埃をあげて駆け抜けることが出来るエクリプスクロスは、やはりクロスオーバーSUVなのだなと実感する瞬間だった。キャンプサイトやテントの横に置いても、実に絵になるのだ。

4WD×スポーティの組み合わせに三菱のスピリットを見る

三菱 エクリプスクロスと筆者の遠藤イヅル氏
三菱 エクリプスクロスと筆者の遠藤イヅル氏

クロスオーバーSUVの定義は様々な解釈があるが、ラダーフレーム構造を取らないモノコックボディを持ち、4WDやRVなどとセダンやクーペ・ステーションワゴンを掛け合わせた多目的車を指すのが一般的だ。

三菱といえば昔からジープ、パジェロ、デリカなど4WDの印象がとても強い。その一方でランサーターボ(ランタボ)やランサーエヴォリューション(ランエボ)など、スポーティなモデルも数多く送り出してきた。ラリーで活躍したモデルも多い。そう思うとエクリプスクロスは三菱が持つ4WDモデルとスポーティなクルマという両方のキャラクターを兼ね備えていることに気がつく。4WD×スポーティの組み合わせは、まさに三菱車の伝統のタッグと言えるのだ。

現在三菱はSUVラインナップに特化していて残念ながらセダンやセダン型の高性能車は姿を消してしまったが、それゆえエクリプスクロスは新しい時代の実用車であり、かつてのセダン的な万能車としても存在が光る。これは現代のランサーなのだ。

確かに尖った性能やC−HRのような飛び抜けたデザインは持たないが、シャープでスタイリッシュな外観を持ち、人も荷物もしっかり積めて、TPOを選ばず、日常使いで乗りやすくストレスも少なく、ハンドリングも良く悪路も走れ、SUV特有の「何か新しい時代が始まりそう」と感じさせてくれるエクリプスクロスは、様々なシチュエーションに対応出来るオールラウンダー・万能選手だった。今後、備えている素性の良さを活かした高性能モデルの登場に期待したい。

[Text:遠藤 イヅル Photo:土屋 勇人]

三菱 エクリプスクロス

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