【高校野球】タイブレーク、有利なのは先攻or後攻? 地方大会のデータから傾向を紐解く

今年の甲子園でタイブレーク突入はあるか

後攻チームが22勝13敗と優位、先攻チームの“セーフティーリード”は?

 今年の春の選抜大会から、日本高野連が導入した「タイブレーク制」。選抜大会では1試合も行われなかった。しかし、より実力が拮抗している夏の選手権では、史上初めて甲子園大会で実現する可能性は大いにある。タイブレーク制に関するデータを紐解きながら、その傾向を探ってみた。

 タイブレーク制は、攻撃側に有利な状況で試合を始め、得点が入りやすく試合の決着が早くつくようにすることで、選手の負担軽減と試合時間の短縮を目指した制度だ。甲子園大会におけるタイブレーク制は国際ルールに則っており、延長13回以降、無死一、二塁の状況から攻撃を始め、打順は前の回からの継続、走者は打順が一番遠い選手2人が入る。

 導入されて初めての夏の選手権となった第100回記念大会の地方大会では、全国で35試合がタイブレーク制による決着となった。地域別の内訳は、

北海道 0試合
東北 0試合
関東 7試合(南神奈川3、西東京2、南埼玉1、茨城1)
北信越 4試合(新潟2、長野1、福井1)
東海 8試合(西愛知3、静岡3、東愛知1、岐阜1)
近畿 5試合(西兵庫3、東兵庫1、京都1)
中国 4試合(岡山2.島根1、山口1)
四国 1試合(高知1)
九州・沖縄 6試合(沖縄3、鹿児島1、長崎1、南福岡1)

 地区別に見ると、沖縄、東兵庫、西愛知、静岡、南神奈川の5地区で3試合がタイブレークになったのが最多。勝ち上がりの段階としては、静岡の準々決勝、島田商10-9静岡市立が最高レベルとなっている。準決勝、決勝でのタイブレークは1試合もない。

 イニングでは、13回での決着が24試合、14回が9試合、15回が2試合。引き分け再試合はゼロだった。

 先攻後攻の別を見ると、先攻チームが13勝、後攻チームが22勝。22勝のうち、同点からのサヨナラが10試合、先攻チームに点を取られてからの逆転サヨナラが12試合。タイブレーク制でも、サヨナラのある後攻チームの有利さは変わらないと言える。

 最大で3点差を逆転してのサヨナラも2試合ある。先攻チームが4点以上を勝ち越すとさすがに逆転された試合はないが、静岡大会準々決勝の島田商は5点を勝ち越して静岡市立に4点を返されている。一応、4点以上がセーフティーリードと言えるだろうが、何点取っても先攻チームは気が抜けない。

「1死満塁、打順選択制」では先攻有利の傾向

 タイブレーク制は、学生野球の明治神宮大会、社会人野球にもすでに導入されているが、国際ルールとは違い、状況は1死満塁から。そしてタイブレーク制初回(神宮大会は10回、社会人野球日本選手権と都市対抗野球では12回)の打順をどこから始めるか選択できるルールとなっている。

 実は、明治神宮大会だと高校の部は過去タイブレークにもつれ込んだ4試合で先攻、後攻とも2勝ずつと互角だが、大学の部では、過去9回で先攻5勝、後攻4勝。そして、社会人日本選手権と都市対抗では、合わせて41試合のタイブレークで先攻24勝、後攻17勝と、先攻有利な数字が出ている。やはり、満塁からだとより得点が入りやすく、後攻チームの心を折る大量点も取りやすいことが、サヨナラのない先攻チームの不利をカバーしていると思われる。

 タイブレーク制が導入されて初の大会となった今年の選抜大会では、延長戦が6試合あったが、10回での決着が5試合、12回での決着が1試合と、タイブレークは実施されなかった。果たして、今大会でタイブレーク決着は実現されるのだろうか。(Full-Count編集部)

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