記録的猛暑に「空調服」注文数増 食用氷も供給不足

 記録的な猛暑が県内経済にも異例の影響を及ぼしている。熱中症対策に力を入れる企業が増え、工事現場などで着用する電動ファン付きの作業着が飛ぶように売れている。猛暑に加え、大阪北部地震や西日本豪雨の影響も重なり、野菜は高騰して飲料は品薄に。過酷な暑さは当面続くとみられ、余波もしばらく続きそうだ。

▽熱中症対策

 「昨年と比べて数十倍の売れ行き。まさかここまでとは」。制服のささや(長崎市)は電動ファン内蔵の「空調服」の注文がひっきりなしに入り、担当者が対応に追われている。
 価格帯は1万円弱~2万円前後が中心。昨年までは大手建設会社の注文が大半で「営業しても反応は薄かった」。今年は県内でも熱中症対策で着用を義務付ける現場もあり、地場企業や農家などからまとまった注文が殺到。メーカーでは欠品が発生しており、「どこまで対応できるか」と話す。
 家電量販店のベスト電器長崎本店(同市)では、中旬からエアコンの需要が急拡大。高齢者宅への取り付け依頼が目立つという。取り付け工事は混み合い、これから購入しても設置は17日以降となる見込み。配送作業に店舗スタッフも借り出されている。担当者は「配送の仕事が回ってくることは過去になかった。これまでにない忙しさだ」。

▽需要が急増

 かき氷や飲料に使う食用氷の工場もフル稼働中。大村製氷(大村市)ではスーパーやコンビニ向けのかち割りなどの注文が例年の約2割増。イベント会場などの熱中症対策で使われる「氷柱」の依頼も急増している。食用氷は全国的に供給不足状態となっており、同社は7月以降、休み返上で需要に応えているが、「例年は盆ごろまでがピークだが、今年はかなり長くなりそう」と気をもむ。
 市販のアイスクリームも品薄状態が続く。卸売業の佐々木冷菓(北松佐々町)によると、7月中旬から一部メーカーで生産が追い付かず品切れが発生。同社の担当者は「盆ごろに品切れが起きたことはあるが、今年はかなり早い」と驚く。逆に、観光施設で「チリンチリンアイス」を販売する前田冷菓(長崎市)は「暑くなりすぎると、お客さんが足早に涼しい室内に入る」と困惑。屋外で販売するスタッフのため、今年から空調服を導入した。
 猛暑による干ばつや水温上昇などで農林水産業の被害も懸念されるが、県によると、現時点で目立った被害の報告はないという。だが、全国的な猛暑と豪雨で野菜の出荷量が減り、葉物野菜を中心に高値傾向が続いている。

▽購入を制限

 県内でも長崎市中央卸売市場で7月21~31日の卸売価格が、過去3年の同期と比較してキャベツは8割高、レタスは5割高と高騰。同市場の卸売業者、長果(長崎市)は「需要が高まるお盆までは今の状態が続くのではないか」とみる。
 熱中症予防には水分補給が重要になるが、肝心の飲料が品薄になっている。大阪北部地震で飲料メーカーの工場が被災し、スーパーやコンビニなどでは水の入荷が激減。特にスポーツドリンクは買い求める人が多く、品切れが続出している。お茶なども含め、飲料の購入に数量制限を設けて対応する店も出ている。

飲料水の品薄により、購入制限に協力を呼び掛けるスーパーの売り場(左)と猛暑で売り上げが急増したファン付き衣類のコラージュ

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