実入りのない夏

 どうやら長崎市あたりには生息していないが、例えば東彼東彼杵町の龍頭泉ではその声を聞けるらしい。ミンミンゼミは、聞きようによって「実入り、実入り」と鳴くという▲セミが実入りを告げる頃なのに、実が入り、育つはずの農作物が育たない。インゲン豆にしても、花は咲いたが「実はさっぱり太らん」と身近な所で聞いた。長いこと家庭菜園に精を出してきて、こんなに「どうもこうもならん夏は初めてばい」と▲主に猛暑のせいらしい。ハクサイ、キャベツ、レタスといった葉物野菜を中心に高値がずっと続いている。少雨も重なり生育が悪い。近所のスーパーで、キャベツは1個300円前後、レタスは200円ほど。野菜不足は良くないけれど、スッと手が伸びなくて…▲ダイコンは6月以降の長雨が影響し、他にもトマト、キュウリ、ナス-と食卓の定番が、少なくとも8月いっぱい、平年の2割以上は高いという。猛暑が続けば、9月に入っても高値の可能性がある▲スーパーは野菜を小分けにし、単価を下げて売ったりと知恵を絞るが、外食産業では野菜価格の上昇などでメニューの値上げの動きもある。たやすくはしのげない▲家計にとっても、野菜を売る側、調理して出す側にとっても厳しい夏が続く。「実入り、実入り」の報が待ち遠しい。(徹)

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