育児は”育自” 一緒に成長 一歩ずつ肩の力抜いて<親になる 男性記者の育休>

ベビーカーに娘を乗せて散歩

 育休期間は3カ月。親子でこれほど四六時中過ごすことは、もうないかもしれない。言葉も交わせない乳児の記憶には残らないだろうが、せっかくの機会。思い出づくりを大切にした。

 「赤ちゃんの背中がちゃんと丸くなるように。随分肩に力が入ってますよ」。熊本市内であった育児教室に参加すると、おぼつかない抱き方に“ダメ出し”を受けた。娘も「パパ、抱っこ下手だね」と言わんばかりに、しかめっ面だ。参加していた隣の男性も同じようにぎこちなく見えて、少しホッとした。

 幼くして両親と生き別れたため、ありふれた親子の思い出はない。祖父は遠くまで釣りや野球観戦に連れて行ってくれた。祖母は授業参観などの学校行事に参加してくれた。「親に捨てられた」言い様のない寂しさは心のどこかに残り続けたが、空白を埋めるように、傷を癒やすように、祖父母に包み込んで育ててもらった。

 娘には、できる限り寂しい思いはさせたくない。親子で過ごす時間を胸に残してほしい。手始めとして、育休中、時間を見つけてはショッピングモールや街中、公園などに親子3人で出かけた。娘は辺りをキョロキョロ眺める程度だが、親子そろう何げない光景も新鮮に感じた。

 おむつ替えやミルク、寝かしつけにも徐々に慣れ、私と娘の2人で過ごす時間を増やしていった。生まれてからほとんど娘と一緒に過ごしている妻は連日の寝不足で疲労困憊[こんぱい]。離れることで、気分転換になるはずだ。

 ベビーカーを押して近所のスーパーや散歩に行ったり、妻に出掛けてもらったり。妻も精神的に楽になったようで、「一人でいても子どものことを考えてしまい、『愛情があるんだな』と感じる」と、表情が明るい。授乳などで頼りっぱなしの妻と離れることは私にとっても“父親修業”。「おなか減ってるな」「暑いのかも」。娘の機嫌を察知できるようになっていった。

 娘の小さな成長を目の当たりにできたのも3カ月の収穫だ。徐々に豊かになる表情や声色、寝返り…。「子どもが育つのって早いんだね」。夫婦の会話も弾み、笑顔があふれた。毎日ストレスもあるが、育児って楽しい。

 いい父親にならないと-。もしかすると、ちょっと気負い過ぎていたのかもしれない。親になるのは怖かった。でも、共に悩み喜ぶ妻がいる。懸命に育ててくれた祖父母の背中をはっきり覚えている。その祖父母はもうこの世にいないが、相談に乗ってくれる友人も同僚もいる。

「育児は育自(自分を育てる)って本当だよね」。友人の先輩ママの実感が染みる。あおむけで寝てばかりだった娘も、この3カ月で体を起こせるようになった。私は親としてまだよちよち歩きだが、一緒に一歩ずつ成長できたらいい。少し、肩の力を抜いてみよう。(編集本部・内海正樹)

(2018年8月5日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

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